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Ett annat 1100-tal. Individ, kollektiv och kulturella mönster i medeltidens Danmark [Medieval Denmark]


Peter Carelli, Lars Hermanson & Hanne Sanders(red.)
Ett annat 1100-tal. Individ, kollektiv och kulturella mönster i medeltidens Danmark(Centrum för Danmarksstudier 3).
Göteborg: Makadam, 2004, 376 s.

- Nye perspektiver på 1100-tallet i Danmark, by Hanne Sanders
- Det långa 1100-talet i det korta 1900-talet, Thomas Lindkvist
- Individualisering, privatisering och kommersialisering, by Peter Carelli
- Makten, individen och kollektivet, by Lars Hermanson
- Vem behövde en by ?, by Katalin Schmidt Sabo
- Naves Magnae - Den professionelle søhandels fartøjer, by Anton Englert
- Er en munk en mand ?, by Nanna Damsholt
- Godsgaver, calumniae og retsanthropologi, by Kim Esmark
- Da Eskil ville være ærkebiskop af Roskilde, by Michael H. Gelting
- Sökandet efter en personlighet, by Kristina Josefson
- Danske korstog før og under korstogstiden, by Kurt Villads Jensen
- Vejen til Jerusalem, by Janus Møller Jensen

Två kommentarer
- Danmarks 1100-tal och andra perspektiv, by Henrik Janson
- Aspekter på individ, kollektiv och kulturella mönster i 1100-talets Danmark, by Mats Riddersporre

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Om Centrum för Danmarksstudier

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12世紀といえば、後の国民国家につながる中世ヨーロッパの骨格が形成されたとして、中世の代名詞のように語られる時期であるが、それはヨーロッパの中核においてのみのことである。「辺境」では、まだまだ国家のシステムを模索する時期であり、したがって残存するデータも少なく、北欧など、下手をすればそれ以前の時期よりもわかっていないことが多い。デンマーク最古の国王証書は1085年に聖クヌーズがルンドの聖ラウレンティウス教会の土地を確認したものであるが、これは写しの形でしか残っていない。オリジナルで残っている最古の国王証書は、1134年にエーリク・エムネが、やはり同じ教会に対し与えた寄進状である。12世紀前半にデンマーク王が発給した証書で今に伝来するものは私の調べた限り15通であり、そのうちオリジナルは2通に限定される。英独仏伊の研究者には信じられないことかもしれないが、これが現実である。ノルウェーとスウェーデンにいたってはもっと悲惨である。したがって、北欧「中世」史の研究は、殆どの場合13世紀以降に集中するのである。

ヴァイキング時代と栄光の13世紀をつなぐ11・12世紀の研究は、ヴェイブル兄弟を除けば、20世紀をつうじて低調の一言に尽きる。かつて、デンマークの中世史家アクセル・クリステンセンが「ヴァイキング時代とヴァルデマー時代の間」(1966)という著名な試論を出したが、それ以降研究は殆ど停滞していたといってよい。ルンド大司教座の成立とヴェンド十字軍という、北欧中世史上避けて通ることのできない「事件」を経験したデンマークで、何事かが起こっていたという認識はあるものの、あまりの史料の貧しさに、接近が許されなかったのである。そこに風穴を開けたのが、本論集の編者もつとめる中世史家ラーシュ・ヘルマンソンと中世考古学者ペーテル・カレッリである。いずれもデンマークではなくスウェーデン国籍というのが味噌である。
Lars Hermanson, Släkt, vänner och makt. En studie av elitens politiska kultur i 1100-talets Danmark. Göteborg, 2000, 280 s.
Peter Carelli, En kapitalistisk anda. Kulturella förändringar i 1100-talets Danmark. Lund, 2001, 463 s.

本論集はこの2冊の研究をめぐる公開討論といってよい。このシンポジウムは、2002年4月12日から13日にかけて、ルンド近郊のヘーアにあるユースホステルで開催された。デンマーク研究所長ハンネ・サンデルス(著名な歴史家ハラルド・グスタフソンの妻)とイェテボリ大学中世史正教授トマス・リンドクヴィストが短めの総論を述べた後、カレッリとヘルマンソンが著書の要約、その後、二人の著作で触れられてない側面を、各論者が補うといった体裁であった。大司教座の件はゲルティングが、ヴェンド十字軍の件はヴィラッズ・イェンセンが、直球というわけではないにせよ触れており、広く議論できる内容になっていたように思う。その場には発表者ではなかったが、トーア・ニューベリやラース・ボワイエ・モーテンセンもおり、それぞれが修道制度と歴史叙述について論じれば、もっと面白かったかもしれない。議論は相当活発で、私など半分も聞き取れなかったが、あるデンマーク人研究者は「スウェーデン語だから7割くらいしかわからん」と言っていた。

これにやや先んじる時代を、北欧というマクロなコンテクストで構造的に理解しようとする試みは、
成川岳大「汎ヨーロッパ的文脈より見たクヌーズ聖王の教会政策 ローマとの関係を中心に」『クリオ』17(2003)
同「ニズの戦いとステンキル王朝の台頭 1060年代スカンディナヴィア世界内における政治構造の変容と「中世的王国」形成をめぐって」『北欧史研究』23(2006)

いずれにせよ、なお一国史的どころか地方史的な理解が基調をなす現地の研究では乏しい視点であり、また北欧初期中世史の資料的困難さを理解する上でも、読むに値する論考である。後者はスウェーデンのステンキル王朝をテーマの中心に据えているが、デンマーク史を理解する上でも必読である。ただ、必ずしも多いとはいえない頁に情報を詰めすぎており、北欧史以外の人間には読みづらいかもしれない。

私は、発表者の一人ゲルティングの教え子であったこともあり、このシンポジウムに参加した。20代の学生風情など他にいるはずもなく、東洋人と言うこともあって、相当珍しがられた。高々一泊であったが、メシの時質問攻めにされたり、飲み屋に連れて行かれたり、スライドの設置を手伝わされたり、抜き刷りをくれたり本をくれたり、まあ色々あった。発表者の殆どと研究内容に関わる会話することができ、そういった意味では有意義であった。宿泊費等は全て無料で、随分太っ腹だと思った。発表とは関係なく面白かったことが二つ。メシはスウェーデン風だったが、あるデンマーク人研究者が「スウェーデンのメシは駄目だな」と言ったこと。お前が言うな。もう一つは、夕食で隣の席に座った発表者の一人でもあるクリスティナから、「デンマーク人は私たちスウェーデン人を暗い、つまらないって言うの。あなたどう思う」と聞かれたこと。知らねーよ(確かにデンマーク人のほうがよく喋るし、笑いをとろうと努力しているようには思うが)。


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