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異端者の群れ [Classics in History]

異端者の群れ.jpg
渡邊昌美
異端者の群れ カタリ派とアルビジョワ十字軍(世界のドキュメント4)
新人物往来社 1969年 278頁

はしがき
聖ベルナールの怒り
南フランスの風雲
異端カタリ派
アルビジョア十字軍
百合の紋章
後日譚

* * * * * * * * * *

本書は名著の類である。概説と言えば概説だけれども、すべてを書かず、無駄のない(そして優しい)日本語で要点を押さえる。必ずしも多いとはいえない頁に、一つの世界が浮かび上がる。私は文にひととなりが映ると信じる人間だが、著者の顔が透けて見えるかのようである。歴史研究者は生涯に研究書を一冊、概説を一冊、一般書を一冊書ければ十分だと思うが、本書は概説と一般書を兼ねる。いまだに日本語で読める南フランスの本はないので、なお標準的な知識を依拠する材料である。そろそろ若手が書いて欲しいものだが。

本書は、神田や早稲田の古書店でもめったに出会えない稀購書であったが、今年になって40年ぶりに八坂書房から復刊された。私の手元には旧版があったので、書店で手に取るにとどめたが、とても美しい仕上がりであった。編集者である八尾睦美氏の情熱と職人芸の賜物である。ついでながら、渡邊の主著『異端カタリ派の研究』も岩波書店から復刊された。第三刷である。樺山の『ゴシック世界の思想像』(岩波書店)も三刷、高山博の『シチリア王国と中世地中海世界』(東京大学出版会)は五刷である。専門家以外は受け付けないであろうゴリゴリの専門書でも、売れるものは売れるようである。誰が買ってんだろう。

著者渡邊は1930年生まれ。長年高知大学で教鞭を執り、退官後中央大学に5年ほど奉職した。東京大学西洋史学研究室の同期は木村尚三郎である。ずっと昔、本書の成り立ちについてご本人からお聞きしたことがあった。ここには書かないが、瓢箪から駒のようでとても面白かった。写真は復刊の表紙である。ちなみに旧版の箱表紙はモンセギュールの航空写真であった。

渡辺の著作は、
『巡礼の道 西南ヨーロッパの歴史景観』(中公新書 1980年)
『フランスの聖者たち』(大阪書籍 1984年)
『中世の奇跡と幻想』(岩波新書 1989年)
『異端カタリ派の研究』(岩波書店 1989年)
『フランス中世史夜話』(白水社 1993年)
『異端審問』(講談社現代新書 1996年)
『オリーヴの風』(ゾーオン社 2000年)

渡辺の翻訳は、
フェルナン・ニール(渡邊昌美訳)『異端審問』(白水社クセジュ 1979年)
ルネ・ネリ(有田忠郎・渡邊昌美訳)『エロティックと文明』(紀伊国屋書店 1979年)
ルロワ・ラデュリ(井上幸治・渡邊昌美訳)『モンタイユー』(刀水書房 1990-91年)
マルク・ブロック(渡邊昌美訳)『王の奇跡』(刀水書房 1998年)
フィリップ・ヴォルフ(渡邊昌美訳)『ヨーロッパの知的覚醒』(白水社 2003年)
ジャン・クロード・シュミット(渡邊昌美訳)『中世歴史人類学試論』(刀水書房 2008年)

私の専門とは毛ほどもかすらないが、ほとんどすべてにお世話になった。

本エントリで200となった。当初は仕事で必要な情報を整理するためにデータをあげていたが、その仕事もほぼ終わったので、今後適当に書くことにする。いずれのエントリも私の専門と大して関係もなく、書評ですらない。その場で思いついたことを記すメモにすぎない。アクセス解析から判断するに結構な数の方が見てくださっているようであるが、私の私的会話が公共性をもつとは思えないのでコメントはあけないし、トラックバックは未だにその意味と効果がわからずスパムが来るだけなのであけない。連絡をとりたいという奇特な方はプロフィールにあるメールでどうぞ。
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