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牧歌/農耕詩 [Sources in Latin]

牧歌・農耕詩.jpg
ヴェルギリウス(小川正廣訳)
牧歌/農耕詩(西洋古典叢書L013)
京都大学学術出版会 2004年 268+11頁

牧歌
農耕詩
解説
固有名詞索引

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いずれもヴェルギリウスの名品。解説によれば、このような田園賛歌は、前古典期のヘシオドス『労働と日々』以来のジャンルだそうである。文学作品ではあるが、在りし日の農業の実態も反映しているので、農村史や技術史からも注目されるテクストである。本書の注釈には、いたるところに植物学的説明や技術史的解釈がある。

なんでこんなものをわざわざ書庫から引っ張り出したのかというと、これに収録されている「中世初期文学における農民と農村世界」という論文が、ずっと心に引っかかっていたからである。中世の農村研究はいくらでもあるが、中世農村の表象というか、農村がどのように価値付けられていたのかを明らかとする、そもそも中世に農村を評価するようなテクストはあったのか。ルゴフの論文はブラガのマルティヌス、トゥールのグレゴリウス、ウェナンティウス・フォルトゥナトゥスといったポスト・ローマ期のテクストに依拠して、手作業をこととする農民を低く見る価値観ができつつあったことを論じる。この当時のルゴフは価値体系という構造主義的理解でテクストの解読を進めていた。

中世に入り農村はもう桃源郷ではなくなった。たぶん農民が坊主の説教を聴かないからだろうと思う。アウグスティヌスにもなんかそんな感じの説教があったな。農民なんて野卑なvillainということになった。その後、いつ田園賛歌が復活するのか私は知らないが、中世後期/ルネサンスくらいではないかと思う。勘だけど、絵画の歴史において背景としての風景に価値を認め始めた時期じゃないだろうか。

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