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東方キリスト教の世界 [Classics in History]

Hagia Sophia.jpg
森安達也
東方キリスト教の世界
山川出版社 1991年 308+7頁

第一部
東方キリスト教の世界
東方正教会における旧約聖典をめぐって
ビザンツ帝国における教養と信仰
東方正教会の神秘思想 ヘシュカスモス論争をめぐって
巡礼と東方教会
十字軍と東方教会
イコノスタシスの空間表現
ボスニア教会をめぐって
カトリック的スラヴ圏と正教的スラヴ圏のはざま ポーランドとウクライナの宗教問題
童貞聖マリアと生神女 ポーランドにおけるマリア信仰と東方的要素

第二部
天国の形象
地獄の形象
正統と異端のあいだで
ロシアとキリスト教
ロシア宣教千年を迎えて
日本人とギリシア正教(講演)

初出一覧
あとがき
索引

* * * * * * * * * *

森安はもう亡くなったが、かつて駒場で教鞭をとっていた。彼のモノグラフを読んだことはないが、複雑な東方キリスト教世界を平易に語るその手腕は卓抜していたように思う。嘘か本当か知らないが、すべてのヨーロッパ言語で日常会話ができるとまで言われていた。ただ、それを感じさせるだけの学識はあった。

本書は一般性のある論考を編んだもの。通読すれば東方キリスト教のかなりの側面が理解できる。もちろん、これだけですべてがわかったと傲慢になってはいけないけれども。そもそも東方キリスト教関係の和書を最近見ないので、いまなお森安の著作が基本書ではある。以前、ビザンツ史家の間でJudith Herrinの翻訳が進んでいると聞いたが、その後話を聞かない。

米田泰治と共著『永遠のイコン ギリシア正教』(淡交社 1969年)
『世界宗教史叢書3 東方キリスト教』(山川出版社 1978年)
『ビジュアル版世界の歴史 ビザンツとロシア・東欧』(講談社 1985年)
『近代国家とキリスト教』(平凡社 2002年)

どれも名著だと思う。森安の本は、東方の専門家よりも、他の地域をやっている人に訴えかける内容がある。レベルを落とさず、読み手に配慮できる人なのだろう。あまり知られていないが、講談社の「ビジュアル版世界の歴史」は、世界史全集の中では面白い人選をしていると思う。樺山紘一が中世の通史を書いたのは、このシリーズにおいてのみである。もう実家に送り返してしまったけれど。

写真は言わずと知れたアギア・ソフィア。教会→モスク→博物館という道筋をたどった。研究対象とはあまり関係ないが、純粋に観光で行ってみたい。

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