ハンザ同盟 [Classics in History]
高橋理
ハンザ同盟 中世の都市と商人たち
教育社歴史新書 1980年 297頁
はじめに
概観
1.ハンザの前史
2.商人ハンザの時代
3.都市ハンザの成立
4.14世紀前後のハンザ貿易
5.ハンザの機構および貿易と都市の態様
6.ハンザの衰退
7.ハンザの末路
参考文献
ハンザ史・世界史対照年表
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ハンザ同盟は高校生でも知っているが、日本語で読める本は大変少ない。本書はほとんど唯一の概論。関連する事象を簡潔に説明するという点で基本書中の基本。ハンザの叙事詩である。でも絶版。まずいと思うんだけれど、版元の教育社がウェブで引っかからないのでつぶれたのかもしれない。
北海のヘゲモニーは初期中世から近世にかけて、フリーセン→スカンディナヴィア→ハンザ→オランダという風に移行する。日本の中世商業史の人間は地中海が多いのであまり注目されることはないけれども、ヨーロッパ史を理解するためには大事な流れだと思う。ハンザは商人ハンザから14世紀には都市ハンザへと移り、法的共同体として、周辺諸国と対等に渡り合うようになった。最も仲が悪かったのはデンマークで、都合三回の戦争を起こしている。第一回対デンマーク戦争では、リューベックを中心にケルン同盟を結び、ヴァルデマー四世治下のコペンハーゲンを急襲、ハンザ側の勝利を得た。1370年にシュトラールズント和約を結び、ヴァルデマーが課した関税を廃止させた。都市連合が国家に勝利したのである。最盛期のハンザの威勢を伝える挿話である。
500年後の1870年、ドイツの歴史家たちは同じシュトラールズントに集い、和約成立の記念行事を挙行した。これを期にできたのが、機関誌Hansische Geschichtsblätterを擁す、ハンザ史学会である。大変素晴らしい雑誌で、コペンハーゲンでは開架で全部読めた。日本では少なくとも東大経済学部と早稲田は全部持っていように記憶しているが、他のところではどうなのだろうか。ただ現在ハンザ研究を牽引するような人物がおらず、この雑誌も今後どうなるかわからない。中世社会経済史の退潮は、欧州のいたるところで確認できる。
なおハンザの基本書は、今なおフランス人による概説である。
Ph. Dollinger, La Hanse. Paris: Aubier 1964.
フランスでは絶版だが、ドイツではその後の研究成果を付した版が何度も刷られているため、こちらを用いる人も多い。
写真はリューベックのホルステン門。デンマークからドイツのハンブルクへ電車で移動するときに、視認できた。とてもめだつ。