ヘイムスクリングラ [Sources in vernacular]
ヘイムスクリングラ 北欧王朝史
プレスポート・北欧文化通信社 2008年 全6巻予定
はじめに
解説
原著者序文
ユングリンガサガ
ハルヴダン黒髪王のサガ
ハラルド美髪王のサガ
ハーコン善王のサガ
灰色マントのハラルド王のサガ
年表
索引
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本書は、本年度の邦語翻訳事業において最も重要な作品である。というのもスノッリの『ヘイムスクリングラ』は、ホメロスやイブン・ハルドゥーンやセルバンテスやドストエフスキーと同様、アイスランドが世界に誇る古典文学なのだから。デリダとかネグリとかの刊行に一喜一憂している似非人文学徒の皆さんは、本書を読んで継承し共有すべき人文知とは何かを考えましょう。
スノッリと『ヘイムスクリングラ』についてはすでにここに書いたし、訳者谷口の仕事についてはここやここに書いた。中世アイスランド文学中、最大かつ最高の作品である。本書が完結すれば(訳者からは全6巻と聞いている)、多くの人の中世アイスランドを見る目も変わるだろうし、中世スカンディナヴィア世界のもつ豊かさも実感できるだろう。中世北欧は「辺境」かもしれないが、ただ「辺境」と棄てるには、あまりに惜しい世界である。相当の語学力と文献処理能力が要求されるため、研究は困難を極めるが、一生を捧げるだけの価値がある対象だということも確かである。
すでにアマゾン等のウェブ書店では入手できる。しかしほとんど在庫なしとなっている。したがって本屋で見かけた場合は、すぐに購入したほうがよい。本書は「1000点世界文学大系」というシリーズに組み込まれているが、その他の訳書とは持つ意味合いが違う。新興出版社であるプレスポート・北欧文化通信社は、この『ヘイムスクリングラ』をどう扱うかで、出版社としての今後の方向性が決まるといっても過言ではない。本来であれば、岩波文庫や新潮文庫に収められてしかるべき作品なのである。これは日本のすべての読書人の目に留まるべき作品なのだから、新聞や雑誌に広告を打ち、出版の事実を周知させるべきである。早々に品切れで、増刷もなし、ひいては全巻が揃う前に出版社解散ということのないようにしてほしい。訳稿は最後まで揃っているはずなのだから。