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Runes and their Origin [Runes]

Runes and their origin.jpg
Erik Moltke
Runes and their Origin. Denmark and Elsewhere.
Copenhagen: The National Museum of Denmark 1985 554p.

Symbols and abbreviations page
Foreword

Part 1: runic writing
What are runes?
The three runic periods and their alphabets
The origins of the runes

Part 2: the inscriptions
Period 1: Roman Iron Age and the migration age. Primitive Norse. C.0-c.AD 600-700
Period 2: The Viking Age. Old Danish c.AD650-c.1025(Knut the Great)
Period 3: The Middle Ages. C.1075-c.1300-1350. Early Middle Danish
Runic studies in Denmark
Runes and runic writings: a select bibliography
General index
Tables of inscriptions

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デンマークのルーンに関心のある研究者にとって、座右の書。1985年までに発見された、デンマークの全ルーンが網羅され、社会背景と関連付けたルーンの特徴が詳述されている。意外に思うかもしれないが、ルーン石碑に関する個別研究は、多くない。イェリングは別格としても、ヘゼビュー、オーフス、グラーヴェンドロップといった著名な石碑群に関する論文は、限りなくゼロに近い。それらを検討したいのだが、さてどうしたものかと天を仰ぎ、そしてまず紐解くのが本書。私だけでなく、世界中のルーン学者がそうであろうと思う。ただし、英語は読みやすいとはいえない。かのPeter Foote大先生による英訳だが、英語らしくない。こなれよりも、原文を髣髴とさせることを選んだのか。

エーリク・モルトケは、前世紀最大のルーン学者の一人。本書出版の前年になくなっているが、長年、デンマーク国立博物館に奉職し、1942年には、リス・ヤコブセンとともに、デンマーク・ルーンのコーパスをつくった。それのみならず、「デンマークの教会」という、デンマークの全教会の歴史的基礎データを収集するプロジェクトの陣頭指揮を執ったという点でも銘記されるべきである。このプロジェクトは未だ完結していないが、コペンの古書市に行けば、その一部が二束三文(1教区10クローネ=180円程度)でたたき売りされている。まとめて買おうと思いつつ、まだ買ってないけど。

とはいえ、モルトケの解釈は、すでに相当の批判に曝されている。著名な論争は二点。一つは、ルーンの生成地の問題であり、これは最近のルーイジェンガの新説に軍配が上がる。もう一つは歴史家ニルス・ロンとの、ヘゼビューのスウェーデン人支配に関する論争である。ヘゼビュー石碑は、非デンマーク起源といわれる、いわゆる短枝ルーンであり、モルトケはこれをもって、スウェーデンによる支配の証拠だと主張した。ちょっと愛国者風のニルスは、それは違う、スウェーデン人が来て、ルーンを彫っただけだ、と反論した。だいたいイェリング開祖のゴームですら、出自が怪しく、べつに流浪のスウェーデン人が、デンマーク領内に一時的に王国を立てたところで、何のふしぎもない。だから、私は、モルトケの言い分には、それなりの分があると思うが…。でもやはり決定打を欠くことも否めない。邪馬台国論争のようなもので、データは出尽くしているんだよねえ。

ともかく、本書がない限り、デンマークのルーン研究は進まない。しかれども、こんなにつくりがしょぼいにもかかわらず、めちゃくちゃ高価だったような気がする。私は本書を国立博物館で購入したが、まだ手に入るんだろうか。

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