大学の起源 [Medieval History]
C・H・ハスキンズ(青木靖三・三浦常司訳)
大学の起源
現代教養文庫 1977年(1970年) 206頁
まえがき
1.大学制度の発生
2.大学教育
3.学生の生活
参考文献解題
大学記録(資料)
1.勉学のために旅をする学生たちのための特権
2.フィリップ尊厳王がパリの学生たちに与えた特権
3.パリ大学の対するグレゴリウス9世の大勅書
4.教授免許授与権
5.教師と学生の税金の免除
6.ハイデルベルク大学の設立勅許書
7.1764年のブラウン大学の設立許可書
8.トゥールーズ大学への勧誘書
9.アベラルドゥスの『然りと否』
10.パリでのアリストテレスの受け入れられ方
11.1241年にパリで断罪された10か条の誤謬
12.パリ大学で学芸の学位に要求された書物
13.パリ大学へ遺言によって送られた書物の目録
14.ボローニャ大学の学芸と医学の教科書
15.ライプツィヒ大学で学芸の学位に要求された書物
16.トゥールーズ大学学芸学部の講義時間表
17.ライプツィヒ大学学芸学部の講義時間表
訳者あとがき
付表(大学年表、中世の大学町)
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すでに稀覯本となっているが、たまに古本屋で見る。名著なので、値段が適正なら、見つけた人は買っておいたほうがよい。
中世史をやっていてまさかハスキンズを知らない人間はいないと思うが、彼の当初の専門は、12世紀ルネサンスでもなければノルマン研究でもない。科学史であり、その流れでの大学史である。12世紀ルネサンスは、その延長線上にある。
三部構成であるが、一番笑えるのは「学生の生活」。ある学生が親父に無心でもしたのだろうか、このような手紙が帰ってきた。
「オルレアンに滞在している息子のGに、ブザンソンのPが父親としての熱意を持って挨拶を送る。『その仕事を怠るものは、滅ぼすものの兄弟である』(箴言18・9)ということばがある。わたしはおまえが自制よりも放縦を、勉強よりも遊びを好み、他人が勉強しているときにへたなギターをかき鳴らし、放埓で怠けた生活をしており、おまえのもっと勤勉な仲間が法律書を何冊も読んでいる間におまえは一冊しか読んでいないと言う結果になっていることを、最近発見した。それゆえ、わたしはおまえがもはや浪費家と呼ばれなくなり、おまえの不名誉がよい評判にかわるよう、おまえの放埓でのんきなやり方をすっかり悔いることを、この機会におまえに勧告する決心をしたのである」(117頁)。
なんとダメな息子。しかしこんなやつ、いくらでもいるわな。講義にでも使うか。
出版年からわかるように、大学問題が噴出していた時期に、大学とは何ぞやという問いに答えるために急遽翻訳された。ふり返ってみれば、教師と学生の自発的組織であるヨーロッパの大学と、上から与えられた組織たる日本の大学では、根底からして全く異なるのだが、当時にあってはなにがしかの役に立ったのかもしれない。それから40年近くが過ぎた。近ごろの大学は資産運用にも熱心で、別にそれ自体は悪いことだとも思わないのだが、自分に無関係でないとなると、ちょっとまてと言いたくなる。総資産が500数十億で130億スったちゅうのはどういうことか。資産の四分の一が飛んでいったことになる。講師料、本当に出るんだろうな。
写真は、ケンブリッジ大学のキングス・コレッジ。ケンブリッジには友人の権利でクイーンズ・コレッジに2泊ほどしたが、、水も緑もありとても美しい。大学とはかくあるべき。でもここもスってんだよなあ。