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Osebergfundet [Medieval Norway]

写真A(ゴクスタ船).jpg
Universitets oldsaksamling ed.
Osebergfundet, 5 bd.
Oslo; Kulturhistorisk museum, universitet in Oslo 1917-2006

bd.1: by A. W. Brøgger, Hj. Falk & Haakon Schetelig(1917), 368 p.
bd.2: by A. W. Brøgger & Haakon Schetelig(1928), 305 p.
bd.3:by A. W. Brøgger, Hj. Falk & Haakon Schetelig(1920), 339 p.
bd.4: Tekstilene by Arne Emil Christensen & Margareta Nockert(2006), 401 p.
bd.5: by A. W. Brøgger & Haakon Schetelig(1927), 279 p.

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オーセベリ船の発掘は1905年。一世紀のときを経て、その調査結果が完結。使途が限定されている金が手元にあったので、4巻を除いた4冊をノルウェーの古本屋で14万円で購入。4巻はすでに手元にあったので、コンプリート。

各パーツの白黒写真とその線描翻刻がとても美しい。4巻だけはカラー。ルーン石碑のカタログもそうだが、とりわけ戦前の写真技術は対象の陰影をうまく撮り、カラー写真とは異なった味わい深さがある。オーセベリ船は、その船体のみならず、ともに副葬されていたそり、四輪車、魔除け、タペストリなどもまた興味深い。

オスロ周辺部では19世紀末から20世紀初頭にかけて、三隻のヴァイキング船が発掘された。トゥーネ船、ゴクスタ船、オーセベル船である。いずれも代表的なヴァイキング船として本に掲載されている。しかしここで注意せねばならないのは、これらの船舶はあくまで船葬墓というスカンディナヴィア特有の墓制に利用されたものであるということである。とりわけ装飾過多のオーセベル船は、実用品かどうか、はなはだ疑わしい。

いずれにせよオーセベル船は、ノルウェー・ヴァイキング時代の、いやノルウェー国家そのものの至宝でありシンボルである。オスロに旅行にいった人は、市内南西部にあるヴァイキング船博物館に立ち寄り、必ずこの美しい船体を目にすることになる。発掘自体がセンセーショナルであり、当時最高の考古学者であったブレッガー、ファルク、シェテリークがその分析を担当している。さらにすごいのが、表紙を開けると、彼ら実質上の編集者の名前の前に、一回り大きなフォントで「ノルウェー国家編纂(Utgit av Den Norske Stat)」とある。日本にとっての法隆寺、デンマークにとってのイェリング・モニュメント、ギリシアにとってのパルテノン神殿のようなもので、その保存と研究は国家の威信をかけておこなわれているわけである。…かつてはね。今、ノルウェーに限らず、北欧諸国が人文学に落とす金は非常に僅かである。

ページを繰ると看過し得ない事実が。本書は655部を印刷し(この数字の根拠は何なのだろうか)、本巻は第338部。1-425部はノルウェー語、426-55部はノルウェー語+「ドイツ語レジュメ」、556-655部はノルウェー語+「英語レジュメ」。…やられたよ。本書はすでに幻の本となってるので入手できただけでもラッキーなのだが、まさか部によって英語とドイツ語のレジュメがあったとは。ともかく我が家の書架には、世界で655セットしかない貴重な研究書が一揃いあるわけである。…と一人で悦に入っていたが近ごろの日本の博士論文は300部程度で出版するという。数から言えばそっちのほうが貴重本となりうるのかな。

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