Quellenbuch zur Kunstgeschichte des abenländischen Mittelalters [Sources in Latin]
Julius von Schlosser
Quellenbuch zur Kunstgeschichte des abenländischen Mittelalters. Ausgewählte Texte des vierten bis fünfzehnten Jahrhunderts.
Wien: Carl Graeser 1896, xxiv+407 p.
Vorwort
Einleitung: Überblick der Kunstliteratur vom IV. bis zum XV. Jahrhundert
Erstes Buch: Christliches Altrthum und frühes Mittelalter
Zweites Buch: Hohes Mittelalter
Drittes Buch: Vierzehntes und fünfzehntes Jahrhundert
Nachträge und Berichtigungen
Register
* * * * * * * * * *
前から欲しかったのだが、同著者によるSchriftquellen zur Geschichte der karolingischen Kunstとともに、古書市場に捨て値で出ていたので購入。Georg Olmsによる1986年の再刊だったので、装丁は綺麗であった。
冒頭にある芸術文献の概観が短いながら役に立つ。歴史の史料類型を扱ったこの本では取り上げられていなかった類型である。日本語でもテオフィロス、ヴィラール・ド・オンヌクール、チェッリーニ、ヴァザーリなどは読むことができるが、聖人伝や教会財産のインベントリも使い方次第ではいい結果が出る。『カール大帝伝』の巻末に添付されている「遺言書」もインベントリの一つ。中世のインベントリを一書にまとめた資料集があって(編者は大変高名なラテン文献学者だったが失念)コピーをして目を通したことがあるが、正確な解読は典礼学に通じていないとできない。
美術史はまず絵を見ろという。それは当たり前なのだが、それでは絵だけ見て美術史ができると思ったら大間違いである。美術史とて、「史」である以上歴史学である。歴史学は印象を述べる評論とは異なり事実の学なので、その絵をいつどこで誰が描いたのかを確定しない限り話は前に進まない。中世に関してはもちろんそんな事実すら確定できないブツがほとんどであるが。美術史のゼミなどだいたい研究文献か古文献の購読ではないか。美術という「テクスト」もまた、文献研究から得られる「コンテクスト」を与えて初めて、歴史的意義が浮かび上がる。この場合、文献研究が「歴史補助学」となろうか。もちろんなかには時代を超越した美を感じさせるものもあるのかもしれないが、そうした評価はすくなくとも特定の分析用語による検証可能性を前提とする美術史の対象ではない。評論家の出番である。
著者のフォン・シュロッサー(1866-1938)はリーグル、ドボルシャック、ペヒトら綺羅星のごときウィーン学派のひとり。自身の系譜を位置づけた細井雄介訳『美術史「ウィーン学派」』(中央公論美術出版 2000年)の翻訳がある。