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Seeing medieval art [Arts & Industry]

Seeing medieval art.jpg
Herbert L. Kessler
Seeing medieval art(Rethingking the middle ages 1)
New York: Broadview 2004, 256 p.

Illustrations
Introduction

1. Matter
2. Making
3. Spirit
4. Book
5. Church
6. Life(and death)
7. Performance
8. Seeing

Notes
Photo credits
Index

* * * * * * * * * *

英語圏ではもっとも著名な部類に入る中世美術史家による入門書。現在ジョンズ・ホプキンズ大学の教授。本文は短いが、注に挙げられた文献はかなり充実している。きちんと注まで読めよということだろう。

いかにもアメリカといってはいけないが、体系性よりもテーマ別追求により中世美術の特徴的な側面をあぶりだす書き方となっている。日本ではまだ少ないタイプのつくりであり、一般史の人間から見ても何が問題となっているのかわかりやすい。私の知る限りでは、中世美術の研究は、様式→図像解釈→受容→機能というふうにその関心が移ってきているように見えるが、本書はまさに社会における美術作品の機能に注目している。今流行の認知という観点まで掘り下げているとはいえないかもしれないが、中世美術を目にする中世人の立場から、作品のありようを理解しようとしている。

一方で気になる点を一つ。本書は分析対象として建築を省いている。それについては本文にエクスキュースもある。確かに近年の中世美術は建築を建築史家に任せる傾向があり、それは専門分化の結果として仕方のないことなのかなとも思う。しかしながら、中世美術、とりわけキリスト教美術の精髄は教会建築であり、絵画や彫刻はその教会建築プログラムの一部である。もちろんそのパーツだけを切り取って中世的美を論じることは可能であるが、それは大前提の前の小前提であるにすぎないと思わざるを得ない。吉川逸治柳宗玄の美しい概観に目を通していると、全体と部分の問題をいっそう強く感じるのである。

なお表紙のデザインは11世紀の写本(AE679, fol.126v, Hessishes Landesmuseum Darmstadt)である。わたしは最初これが中世美術だとは思わず変な表紙とおもっていたが、裏表紙の折り返しに説明がついていた。「この11世紀の写本には、超越論的思索は抽象的手段によって導かれたという中世盛期の一つの流行があらわれている。ここでは、観者の思考を肉体的世界から目に見えぬ神へと導くために(それが唯一の道というわけではないが)、淡い連なりとなっている天的な色が、言葉と絵が刻み込まれている羊皮紙、つまり動物の皮膚そのものを引き上げているのである」。…わたしにはよくわからんな。

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