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Europe around the year 1000 [Early Middle Ages]

Europe around the year 1000.jpg
Przemyslaw Urbanczyk ed.
Europe around the year 1000
Warsawa: DIG 2001, 488 p.

- Introduction(Przemyslaw Urbañczyk)
- Le débat sur la „mutation féodale”: état de la question(Christian Lauranson–Rosaz)
- The Church and Christianity about the year 1000 (the missionary aspect) (Jerzy Strzelczyk)
- The languages of Europe around the year 1000 A.D.(Paul Bibire)
- Change of transcontinental contacts as indicated by coins in the Baltic zone around 1000(Stanislaw Suchodolski)
- Wood and climate of the year 1000 A.D(Tomasz Wany)
- The decline and legacy of Khazaria(Vladimir Ya. Petrukhin)
- Kievan Rus’ around the year 1000(Oleksiy Tolochko)
- Transylvania around A.D. 1000(Florin Curta)
- The Eastern Roman Empire at the turn of the first millennium(Panagiotis Antonopoulos & Charalambos Dendrinos)
- Der Ostadriatische Raum um das Jahr 1000(Peter Štih)
- Important figures in Italy in the year 1000(Claudio Azzara)
- Warfare and other plagues in the Iberian Peninsula around the year 1000(Amancio Isla)
- Apocalypse then: England A.D. 1000(Simon Keynes)
- Alba: the kingdom of Scotland in the year 1000(Barbara E. Crawford)
- Ireland c. 1000(Dáibhí Ó Cróinín)
- Vinland 1000 - a European outpost in North America(Birgitta Linderoth Wallace)
- The conversion of the Icelanders(Orri Vésteinsson)
- Norway at the threshold of Western Europe(Claus Krag)
- Denmark - a thousand years ago(Else Roesdahl)
- A.D. 1000 - the point of no return for the kingdom of Sweden(Wladyslaw Duczko)
- The Polabian alternative: paganism between Christian kingdoms(Christian Lübke)
- New peoples around the year 1000(Herwig Wolfram)
- Poland as an ally of the Holy Roman Empire(Andrzej Pleszczyñski)
- Bohemia’s Iron Year(Dušan Trestik)
- The making of the Christian kingdom in Hungary (Marianne Sághy)
- The Emperor and his friends: the Ottonian realm in the year 1000(Ludger Körntgen)

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収録論文の内容には粗密があるが、紀元千年前後の研究者にとっては有用な論集。少なくとも私は、『ケンブリッジ版中世史』の第3巻と合わせて、非常に役にたった。執筆者の名前を見ればわかるが、当該地域の第一人者が寄稿している。編者のウルバンチクはポーランド人考古学者。専門はポーランドに加えてなぜかノルウェー。どのようなネットワークがあるのか知らないが、よくもこれだけの人を集めたものだと思う。クルタやケインズなんて、今であれば忙しすぎて書いてくれないだろう。

カロリング期と12世紀の研究者はたくさんいるが、その間の時代、つまり紀元千年期の専門家は少ない。そもそも紀元千年期を特別な時代枠として設定する研究者すらあまりいない。カロリング期のあとは「第二次蛮族の侵入」であり、それが落ち着くとグレゴリウス改革と「中世の春」12世紀である。日本では中世ヨーロッパの通史など、だいたい初期中世か12世紀以降の人間が書くので、紀元千年期は初期中世の最後の段階かもしくはロマネスク時代の始まりとしてのみの扱いを受けている。これがイギリスやフランスを機軸としたものの見方であると理解している人間はどれくらいいるだろうか。

そのような研究状況であるからこそ、この時代を特別に取り上げる意味もある。とりわけドイツ、東欧、北欧の専門家にとって、紀元千年前後はその後の歴史を決定する国家システムが形成されるきわめて重要な時期である。イギリス、フランス、地中海諸国の研究者にとって紀元千年という分水嶺がどれだけの意味を持つのか、正確には把握していないが、これまでの中世ヨーロッパ像はそうした地域を専攻する歴史家が描き出してきたことを考えると、「辺境」の専門家がヨーロッパ史に寄与できることは、専門の地域史以外に、まだまだあるようにも思える(ドイツの専門家はドイツ以外についてはほとんど語らない)。この展覧会はひとつの画期であったのかもしれない。他地域の研究者と連携した学問的展開を思えば、ドイツ衛星国だけでなく、アメリカや西欧でもやるべきだったけど。

この論集には姉妹編がある。
Przemyslaw Urbañczyk ed. The neighbours of Poland in the 10th century. DIG 2000, 204 p.
Przemyslaw Urbañczyk ed. The neighbours of Poland in the 11th century. DIG 2002, 210 p.
この2冊は「ポーランドの隣人」なので、ポーランド隣接国家のみを取り上げている。ところで10世紀版にはなぜかデンマークの論文が収められていない。ウルバンチクは「残念ながらこのプロジェクトに招聘されたデンマーク人は、およそ24ヶ月の間にテクストを書こうとはしなかった」と述べている。「およそ24ヶ月の間に(within almost 24 months)」と具体的な数値を出すあたり、これだけ時間を与えてやったのにという編者の怒りが透けて見える。誰だか知らんけど、迷惑かけんなよ。

ウルバンチクの本はポーランドで出版されているので、通常のルートでは入手し得ない。わたしはコペンハーゲン大学の書籍部で手に入れた。調べると現在はインターネットでも購入できるようである(ここ)。ウェブに何が書いてあるのかほとんど読めません。



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