歴史におけるテクスト布置 [Early Middle Ages]
名古屋大学グローバルCOE「テクスト布置の研究と教育」
第12回国際研究集会「歴史におけるテクスト布置」
Configuration du texte en histoire 「歴史におけるテクスト布置」(pdf)
日時:2011年9月1日(木)14:00-17:30、9月2日(金)9:30-17:30
場所:名古屋大学野依記念学術交流館
主催:名古屋大学大学院文学研究科
【プログラム】
9月1日(木) 14:00-17:30
[Ouverture] Shoichi SATO (Directeur du programme GCOE)
[開会の辞]佐藤彰一
- Michel SOT (Université Paris-Sorbonne), Configuration d’un texte hagiographique au IXe siècle : la translation des reliques des saints Marcellin et Pierre par Éginhard
ミシェル・ソー「9世紀のある聖人伝テクストの布置 アインハルト『聖マルケリヌスとペトルスの聖遺物の奉遷』」
- Helmut REIMITZ (Princeton University), Authenticity and appropriation: The social logic of historiographical compendia in the Carolingian period [paper to be read by the organizer]
ヘルムート・ライミッツ「真正性と流用 カロリング期における歴史叙述抜粋集の社会的論理」(テクスト代読)
- Minoru OZAWA (Rikkyo University), Role of the Life of Archbishop Unni of Hamburg in the Gesta Hammaburgensis ecclesiae pontificum
小澤 実「『ハンブルク司教事績録』における「ハンブルク大司教ウンニ伝」の役割」
9/2[Fr] 9:30-12:00
- Osamu KANO (Universit? de Nagoya), “Configuration” d’une espèce diplomatique: le praeceptum denariale dans le haut Moyen Àge
加納修「ある文書類型の「布置」 中世初期における「デナリウス方式による解放証書」」
- Stefan ESDERS (Free University of Berlin), The early medieval use of late antique legal texts: The case of the manumissio in ecclesia
シュテファン・エスダース「中世初期における古代末期の法テクストの利用 「教会における奴隷解放」について」
- Shigeto KIKUCHI (University of Tokyo), Carolingian capitularies as texts
菊地重仁「テクストとしてのカロリング期のカピトゥラリア」
9月2日(金) 13:30-17:30
- Yoshiya NISHIMURA (Meijo University), Redaction and the use of lists of rents in eleventh and twelfth-century Tuscany
西村善矢「11,12世紀トスカーナ地方における地代リストの作成と利用」
- Takashi ADACHI (Hirosaki University), Charters, cartulary and family lineage re-created: A genetic study of the cathedral archive of Huesca from the twelfth to the mid-thirteenth century
足立孝「オリジナル、カルチュレール、家門の「創造」 ウエスカ司教座聖堂教会文書の生成論(12世紀~13世紀中葉)」
- François BOUGARD (Université Paris-Ouest), La prosopopée au service de la politique pontificale: saint Pierre et les Francs
フランソワ・ブガール「ローマ教皇の政治に奉仕する活喩法 聖ペトロとフランク人」
- Yves SASSIER (Université Paris-Sorbonne), Autour des premiers chapitres du De regali potestate et sacerdotali dignitate de Hugues de Fleury (déb. XIIe s.): adaptation au contexte du temps et amplification d’un vieux discours théologico-politique
イヴ・サシエ「ユーグ・ド・フルリー『王権と祭司職について』の最初の数章をめぐって 時代コンテクストへの適合と古き政治神学的言説の拡張」
- Conclusion(総括)
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いずれプロシーディングが刊行されるでしょうが、告知です。
21世紀COEからはや10年。初年度採用プロジェクトが最終年度となる本年度以降、COEという名前は文科行政と大学組織から段階的に消滅する。名古屋大学文学部は、学際的新機軸を打ち出した数あるCOEのなかで、人文学に特化した「特異な」ポジションを保持していた。リーダーが西洋中世史家ゆえ、2004年、2006年、2009年にも現地研究者を招聘した大規模なシンポを行った(報告成果はこちらとこちら)。本研究集会は、名古屋COEの西洋中世部門10年間の締めの一環でもある。
来日する外国人は、フランス人3(ソー、ブガール、サシエ)、ドイツ人1(エスダース)、オーストリア人1(ライミッツ)。ソーとブガールは来日経験あり。原稿のみで来日しないライミッツはプリンストン大学におけるピーター・ブラウンの後任。彼らの業績は日本ではほとんど紹介されていないが、第一級の初期中世史家たちである。対する日本人は、やはり初期中世史を専門とする若手から中堅。フランス語は通訳がつくが、英語はなし…。
プログラムを見ればわかるように、すべての報告は一時史料の細かい解釈に基づく。出版社や一般人としては、「重箱の隅をつつくような議論」はごめん被りたい、もっと大きな話をという考えが多数であろうが、学問というのはそうしたレベルの議論からしか生まれてこないことを理解すべきである。メディアでは専門分化を揶揄して「蛸壺化」という言葉を使うが、まともな学者は、オリジナリティある一つの大きな絵を描き出すための検証事例として、「重箱の隅をつつくような議論」をしている。そもそもテクストに基づく「重箱の隅をつつくような議論」のできない人間は歴史学者と名乗ってはいけません。
なお、研究集会初日(9月1日)の夕方に懇親会が予定されている。ご参加いただける方は、8月19日(金)まで担当の加納修(kano@lit.nagoya-u.ac.jp)までご連絡を。
写真は会場となる野依記念学術交流館。