Die Wirklichkeit und das Wissen [Historians & History]
Otto Gerhard Oexle, herg. von Andrea von Hülsen-Esch, Bernhard Jussen, Frank Rexroth
Die Wirklichkeit und das Wissen: Mittelalterforschung – Historische Kulturwissenschaft – Geschichte und Theorie der historischen Erkenntnis
Göttingen:Vandenhoeck & Ruprecht 2011, 1060 p.
Vorwort der Herausgeber
Einleitung von Otto Gerhard Oexle
GESCHICHTE ALS HISTORISCHE KULTURWISSENSCHAFT
1. Historische Kulturwissenschaft heute
2. Begriff und Experiment. Überlegungen zum Verhältnis von Natur- und Geschichtswissenschaft
MEMORIA UND KULTURELLES GEDÄCHTNIS
3. Die Gegenwart der Toten
4. Memoria und Memorialüberlieferung im früheren Mittelalter
5. Die Memoria der Reformation
6. Christina von Schweden, der Grand Condé und die Revolution der Wissenschaft im 17. Jahrhundert
STÄNDE
7. ›Stand‹ im lateinischen Europa
8. Deutungsschemata der sozialen Wirklichkeit im Mittelalter
9. Die Armut der Elisabeth von Thüringen
SOZIALE GRUPPEN IN DER GESELLSCHAFT
10. Wie entstanden Werte in der Gesellschaft des Mittelalters?
11. Koinòs bíos: Die Entstehung des Mönchtums
12. Conjuratio und Gilde im frühen Mittelalter. Ein Beitrag zum Problem der sozialgeschichtlichen Kontinuität zwischen Antike und Mittelalter
13. Gilde und Kommune. Über die Entstehung von ›Einung‹ und ›Gemeinde‹ als Grundformen des Zusammenlebens in Europa
14. Friede durch Verschwörung
15. Alteuropäische Voraussetzungen des Bildungsbürgertums – Universitäten, Gelehrte und Studierte
DIE ›WIRKLICHKEIT‹ DER GESCHICHTE
16. Die mittelalterliche Zunft als Forschungsproblem
17. ›Staat‹ – ›Kultur‹ – ›Volk‹. Deutsche Mittelalterhistoriker auf der Suche nach der historischen Wirklichkeit 1918 – 1945
18. »Wirklichkeit«– »Krise der Wirklichkeit«– »Neue Wirklichkeit«. Deutungsmuster und Paradigmenkämpfe in der deutschen Wissenschaft vor und nach 1933
19. »Begriffsgeschichte« – eine noch nicht begriffene Geschichte
DIE MODERNE UND IHR MITTELALTER
20. Das entzweite Mittelalter
21. Die Moderne und ihr Mittelalter. Eine folgenreiche Problemgeschichte
22. Die gotische Kathedrale als Repräsentation der Moderne
IM RÜCKBLICK
23. Das Menschenbild der Historiker
24. Mein Romspaziergang
Verzeichnis der ersten Druckorte
Verzeichnis der Veröffentlichungen von Otto Gerhard Oexle
Personenregister
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オットー・ゲアハルト・エクスレといって、日本人で知っている研究者がどれくらいいるのだろうか。しかし戦後ドイツが生んだ最良の中世史家の一人である、と私は思っている。
エクスレは、ドイツ圏において極めて高い評価を受けている研究者である。もともとロマニストとしての訓練を受けていたことから、いわゆるアナール第三世代が隆盛を極めていた時代の成果を積極的にドイツに紹介し、それをただ紹介するだけではなく、エクスレ得意の概念史ならびに社会構造史へと接続することで、ドイツの中世史学界に受け入れやすく解釈し直したからである。
エクスレは、尊敬を受けつつも、ドイツの中世史学界の中では特異な存在である。というのも、Dissertation(Die Karolinger und die Stadt des heiligen Arnulf, in: Frühmittelalterliche Studien 1, 1965)やHabilitation(Forschungen zu monastischen und geistlichen Gemeinschaften im westfränkischen Breich 1973)よりも、その後刊行された論文群で評価される人物だからである。学位論文から明らかなようにエクスレは純然たるカロリング朝の専門家であり、戦後ドイツ中世史を席巻した記念祷グループの有力な一人としてフルダ修道院の記念祷研究にもかかわったが、それと相前後して、周囲の求めによってか自身の趣向によってかは知らないが、「初期中世における…」、「中世社会における…」、「ヨーロッパにおける…」という一般的論考が多くなった。ドイツ歴史学が得意とする水も漏らさぬ史料と研究史の悉皆調査に基づく実証論文というよりも、もう一段フェーズを挙げたレベルの仕事である。歴史上の個人ではなく、記憶、ギルド、集団、身分、自由などといった時代に拘束される概念の歴史的意義と変化を捉えた。オットー・ブルンナーの系譜なのであろうが、このあたりはジャック・ルゴフの歴史学と通じるところがあるし、また日本の(歴史学ではなく)いわゆる西洋史学と親和性が高いかもしれない。他方でエクスレは学問史の開拓にも力を注いだ。「中世」という概念の構築性、歴史主義の諸相、ナチズム期の歴史家の動向、社会学と歴史学の接点などである。
人が認識しうる事実とは何かが、エクスレの生涯をかけた探求対象であった。本質主義的なアプローチではなく、そうした「認識しうる事実」もまた人間の認識に基づく以上時代の拘束性を逃れないことを提示したといってよいかもしれない。
本論集が計上したエクスレの編著・論文は269本。本論集が収録したのは、そのうち24本(うち一本は初収録)に過ぎない。エクスレは長らくゲッティンゲンにあるマックス・プランク研究所歴史部門の所長をつとめたが、彼の引退と同時に、この歴史部門は解体され、「宗教的民族的多様性研究部門」となった。たしかにエクスレの操作概念を引き継ぐものであるが、スタッフに歴史家はいない…。
日本語でエクスレの議論を紹介したものとして、佐藤専二「コンユラーティオと一揆--オットー・ゲルハルト・エクスレの所説にふれて」『立命館文學』558巻(1999), 552-566頁、また、若い頃にエクスレの薫陶を受けた歴史家による、甚野尚志『中世ヨーロッパの社会観』(講談社学術文庫 2007年)もある。
歴史学の学術ドイツ語を学びたいという向きには、エクスレの文章は良いのではないかと思う。それぞれ読み応えはあるけれども難解なフリート、ザッハリッヒなアルトホフ、情報過多なボルゴルテなどに比べれば、構造も論理も端正である。個人的には奇矯とも言えるフリートが好きなのだが、購読で用いるとすればエクスレのほうが無難か。