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古代末期の形成 [Classics in History]


ピーター・ブラウン(足立広明訳)
古代末期の形成
慶応義塾大学出版会 2006年 245+5頁

凡例
日本語版への序文
謝辞

第1章 聖性に関する議論
第2章 野心の時代
第3章 《神の友》の成長
第4章 天の国から地上の国へ―アントニウスとパコミウス―

原註
訳註
訳者
あとがき
主要固有名索引

Peter Brown
The Making of Late Antiquity(The Carl Newel Jackson Lectures).
Cambridge, Mass.: Harvard UP, 1978, 135 p.

* * * * * * * * * *

長文の「日本語版への序文」がすばらしい。ピーター・ブラウンは論争的な著作を世に問い、ある程度の時間がたったところで旧著に立ち戻り、かつての自説に修正を加える。日本史であれば網野善彦もそうであった。筆者の知的遍歴に関してはここを参照。

似たような題名の、
ピーター・ブラウン(宮島直機訳)『古代末期の世界 ローマ帝国はなぜキリスト教化したか?』(刀水書房 改訂新版 2006), xiii+233頁

は、東地中海世界の宗教攻防の様相を描き、ペルシアやイスラーム世界の勃興も射程に入れる。図版も多い。ただし次の文献も。
The World of Late Antiquity revisited, Symbolae Osloenses 72(1997), p. 5-90.

ピーター・ブラウン自身が1971年の著書を振りかえり、G. W. Bowersock、Averil Cameron、Elisabeth A. Clark、Albrecht Dihle、Garth Fowden、Peter Heather、Philip Rousseau、Aline Rousselle、Hjarmar Torp、Ian Woodがコメント、最後に再度ブラウンが答弁に立つ。

1998年に来日し、東京大学で網野善彦とともに合同講演会をおこなった。司会は樺山紘一・高山博、通訳は後藤篤子であった。随分と若い頃の話だが、ブラウンの英語が高級であるだけでなく、ブラウン自身の声がしばしば裏返るので、正直何を言っているのかわからなかった。そのときの講演「古代から中世へ ポスト帝国期西ヨーロッパにおける中心と周縁」は『史学雑誌』に掲載されたが、最近論文集に採録された。
ピーター・ブラウン(後藤篤子編訳)『古代から中世へ』(山川レクチャーズ2)(山川出版社 2006), 141頁

その英語は決してやさしくはないが、読むたびに心が打ち震える。ブラウンは間違いなく世界最高の歴史家の一人であり、古代史家や中世史家ならずとも、そして歴史専攻者ならずとも、広く読まれてしかるべき歴史書の書き手であると信じる。


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