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ビンゲンのヒルデガルト [Medieval Spirituality]


H・シッペルゲス(熊田陽一郎・戸口日出男訳)
ビンゲンのヒルデガルト 中世女性神秘家の生涯と思想
教文館 2002年 ii+218頁

一.序
二.生涯と作品
三.世界と人間
四.自然学と医術
五.治癒と救済
六.展望
ヒルデガルトの詩から

主要文献
訳者あとがき
人名索引

Heinrich Schipperges
Hildegard von Bingen(Beck'sche Reihe).
München, 1995, 122 S.

* * * * * * * * * *

ビンゲンのヒルデガルト(1098-1179)は、1150年ごろベネディクト会系ディジボーデンベルクからビンゲン近郊ルーペルツベルクへと移動し、そこで女子修道院長を務める。クレルヴォーのベルナール(1090-1153)と同時代人。

著者のハインリヒ・シッパーゲス(1918-)は、医者であると同時にハイデルベルク大学医学史研究所長をつとめた。博士論文もビンゲンのヒルデガルトであり、彼女に関しては世界的権威である。翻訳もいくつかある。

H・シッパーゲス(大橋博司他訳)『中世の医学 治療と養生の文化史』(人文書院 1988), 326頁
H・シッパーゲス(濱中淑彦監訳 )『中世の患者』(人文書院 1993), 367頁
H・シッパーゲス(千谷七郎監訳)『歴史に映した現代医学』(文光堂 1983), 370頁
ディートリヒ・フォン・エンゲルハルト/ハインリヒ・シッパーゲス(藤森英之訳)『医学と哲学の対話 生病死をめぐる21世紀のコンテクスト』(創造出版 2005), 239頁

ビンゲンのヒルデガルトをめぐるその他の研究として、
上條敏子「ビンゲンのヒルデガルト 一女子修道院長の生涯と作品」『史学』65-4(1996), 113-26頁
鈴木宣明「ヒルデガルト・フォン・ビンゲン 宇宙的神秘霊性」鈴木宣明『中世ドイツ神秘霊性』(南窓社 1991), 61-92頁
種村季弘『ビンゲンのヒルデガルトの世界』(青土社 2002 初版1994), 430頁

エリザベート・ゴスマン「ビンゲンのヒルデガルトの自然理解」上智大学中世思想研究所編『中世の自然観』(創文社 1991), 77-89頁
バーバラ・ニューマン(村本詔司訳)『ヒルデガルト・フォン・ビンゲン 女性的なるものの神学』(新水社 1999), 377頁

ヒルデガルトのテクストは、
佐藤道子訳「スキヴィアス(道を知れ)」『中世思想原典集成13 女性の神秘家』(平凡社 2002), 31-306頁
プリシラ・トループ(井村宏次監訳/聖ヒルデガルト研究会訳)『聖ヒルデガルトの医学と自然学』(ビイング・ネット・プレス 2002), 381頁

彼女による旋律も残されている。
ヒルデガルト・フォン・ビンゲン(セクエンツィア)『シンフォニア-宗教歌曲集』(日本BMG 1992)

十枝正子「ビンゲンのヒルデガルトの宗教音楽劇『神の諸力の劇』」『エリザベト音楽大学研究紀要』26(2006), 33-46頁
十枝正子「ビンゲンのヒルデガルトの宗教声楽曲 ヒルデガルトの生涯と神学的音楽観」『エリザベト音楽大学研究紀要』25(2005), 13-26頁

中世音楽のカタログはないのだろうか。

周辺人物によるヒルデガルトの伝記として、
ゴットフリート修道士・テオーデリヒ修道士(久保博嗣訳/井村宏次解説)『聖女ヒルデガルトの生涯』(荒地出版社 1998), 331頁

神秘主義は霊性と深くかかわりあう述語であり、学問の俎上にのせるためにはきちんとした定義が必要であるが、なかなか難しい。単なる論理ではないとするならば、表現手段として文字よりも五感に訴える音楽や図像が重要になってくるのかもしれない。しかしなぜドイツライン沿岸部は神秘主義者を輩出するのだろう。

上田閑照『ドイツ神秘主義研究』(創文社 1986)
W・R・イング(磯田信夫・中川景輝訳)『キリスト教神秘主義』(牧神社 1976)
F・W・エッゲベルト(横山滋訳)『ドイツ神秘主義』(国文社 1979)
P・ディンツェルバッハー(植田兼義訳)『神秘主義事典』(教文館 2000), 515頁

ビンゲンのヒルデガルトは女性史の文脈でフィーチャリングされる事が多いが、女性だけを取り上げることに歴史学的な意味はない。かりにヒルデガルトの思想や行動に「女性性」を見出すことができるとするならば、それは「男性性」との相対的な関係の中でのみ意味を持ちうる。女性史ではなくジェンダー史。歴史学におけるジェンダー研究は「抑圧された」女性像の喧伝のためではなく、コンテクストによって変動するジェンダー概念や両性の役割を浮き彫りにし、当該社会の特性を明らかにするために存在する。

ジョーン・スコット(荻野美穂訳)『ジェンダーと歴史学 増補新版』(平凡社ライブラリー 2004), 535頁


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