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アレゴリーとシンボル [Arts & Industry]


R・ウィトカウアー(大野芳材・西野嘉章訳)
アレゴリーとシンボル 図像の東西交渉史(ヴァールブルク・コレクション)
平凡社 1991年 448頁

緒言
第1章 東と西 文化交流の問題
第2章 鷲と蛇
第3章 東方の驚異 怪物誌に関する一研究
第4章 マルコ・ポーロと《東方の驚異》の絵画的伝統
第5章 《ロック》 オランダ版画のなかの東方の怪物
第6章 好機・時・美徳
第7章 《忍耐》と《好機》 ある政治的寓意の物語
第8章 初期ルネサンスにおける象形文字学
第9章 ルネサンスのイメージ体系におけるミネルウァの変容
第10章 ティツィアーノ《スペインによって救われる信仰》
第11章 エル・グレコの身振り言語
第12章 マルテン・デ・フォスの画中の《死》と《復活》
第13章 《グラマティカ(文法)》 マルティアヌス・カペラからホガースまで
第14章 視覚的象徴の解釈

原註
訳者あとがき
索引

Rudolf Wittkower
Allegory and the Migration of Symbols. The Collected Essays of Rudolf Wittkower.
London: Thames & Hudson, 1977, 223 p.

* * * * * * * * * *

ルドルフ・ウィットカウアー(1901-75)はベルリンに生まれた。ユダヤ人であったため、1933年にやはり美術史家であった妻マーゴットとともにロンドンへ移住し、ウォーバーク(ヴァールブルク)研究所に奉職する。ナチと親近性のあったハンス・ゼードルマイヤーとの間に、ベルニーニの作品をめぐる論争を展開する。
ハンス・ゼードルマイア(島本融訳)『芸術と真実 美術史の理論と方法のために』(みすず書房 第2版 1983), 385頁
ハンス・ゼーデルマイヤ(前川道郎・黒岩俊介訳)『大聖堂の生成 』(中央美術公論社 1995), 706頁

1954年にはハーヴァード大学の客員教授となり、56年にはコロンビア大学に美術史の教授として招かれた。リタイアした後、ナショナル・ギャラリーのクレス教授職とケンブリッジ大学のスレイド教授職を得ている。

という話をいまやインターネットで読むことができる。便利な時代になったものだ。ウィットカウアーの邦訳として、
R・ウィットコウアー/M・ウィットコウアー(中森義宗・清水忠訳)『数奇な芸術家たち 土星のもとに生まれて』(美術名著選書10)(岩崎美術社 1969 原著1963), 619+42頁
ルドルフ・ウィットコウワー(中森義宗訳)『ヒューマニズム建築の源流』(彰国社 1971 原著1949), 310頁
ルドルフ・ウィトコウアー(池上忠治監訳)『彫刻 その制作過程と原理』(中央公論美術出版 1994 原著1977), 360頁
フリッツ・ザクスル/ルドルフ・ウィトカウアー(鯨井秀伸訳)『英国美術と地中海世界』(勉誠出版 2005 原著1948), 216頁

図像学にせよ図像解釈学にせよそれはそれで面白いが、私の関心を引いたのは第8章の象形文字受容の研究である。ルネサンス期には文献学の昂進と、時間的空間的異世界への関心によって、ラテン文字以外の文字への関心も澎湃した。まずはギリシア、そして北のオガムやルーン、南の象形文字やアラビア文字、さらには東方世界の漢字。それぞれの研究道程はおそらく各文献学において詳細に論じられていると思うが(私の知る限りルーンは殆どなし)、それらをルネサンス期の一大ムーブメントとして論じた研究や論文集はあるのだろうか。専門でもないので調べたことはないが、あれば読んでみたいなあ。文字の歴史ではなく文字研究の歴史。言語学の一部となるのだろうか。

この「ヴァールブルク・コレクション」は素晴らしい。訳者も偉いが一番偉いのは、マニア受けにとどまりそうな企画を実現させた編集者二宮隆洋である。平凡社もよくOKをだしたな。少しは儲かったのだろうか。おかげでヴァールブルク学派に関しては日本でも随分知られるようになったし、珠玉の作品群を日本語で読めるようになった。
松枝到編『ヴァールブルク学派 文化科学の革新』(平凡社 1998), 471頁

ただほとんどは絶版であり、古書市場でもいくつかを除けば入手が困難である。特に本書や『古代神学』は、たとえ出回っていたとしても、目が飛び出るような値段がついている。いくつかはちくま学芸文庫におちているので、これからもぜひ続けて欲しい。

アビ・ヴァールブルク自身についての研究も日本語で随分読める。
E・H・ゴンブリッチ(鈴木杜幾子訳)『アビ・ヴァールブルク伝 ある知的生涯』(晶文社 1986), 410+xxiii頁
田中純『アビ・ヴァールブルク 記憶の迷宮』(青土社 2001), 397頁
ジョルジュ・ディディ=ユベルマン(竹内孝宏・水野千依訳)『残存するイメージ アビ・ヴァールブルクによる美術史と幽霊たちの時間』(人文書院 2005), 770頁

そういえば昔上野の西洋美術館でヴァールブルク展があった。カタログも買ったが、当時は意味がわからなかった。まあ今でもわからないが。
国立西洋美術館編『記憶された身体 アビ・ヴァールブルクのイメージの宝庫:アルベルティー
ナ版画素描館・オーストリア国立図書館より』(国立西洋美術館 1999), 257頁


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