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テクストの宇宙 生成・機能・布置 [Early Middle Ages]


佐藤彰一編
テクストの宇宙 生成・機能・布置(21世紀COEプログラム「統合テクスト科学の構築」SITES講演録2004-2005年)
名古屋大学大学院文学研究科 2006年 296頁

ジャン・ブザン(西村善矢訳)「西洋中世の筆者用具」
ジャン=ピエール・ドゥヴロワ(岡崎敦訳)「人文科学の研究・教育基盤としての大学図書館 ブリュッセル自由大学における図書館と歴史学教育(1876-2005)」
ミシェル・バラール(西村善矢訳)「中世ジェノヴァの公証人文書」
ユゲット・タヴィアーニ=カロッツィ(西村善矢訳)「ラウル・グラベール『歴史』における紀元千年の異端 テクストとコンテクスト」
クロード・カロッツィ(加納修訳)「彼岸とテクストの曖昧さ」
ピーター・ジョン・ローズ(周藤芳幸訳)「ソロンの改革と法 懐疑論への反駁」
ミシェル・ザンク(松澤和弘・鎌田隆行訳)「現在、文学を研究すること」
シーリア・シャゼル(木俣元一訳)「8世紀イングランドにおける聖書 社会改革の基礎を築く」

編者あとがき

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佐藤彰一をプロジェクトリーダーとする名古屋大学文学研究科の21世紀COE「統合テクスト科学の構築」は、西洋中世テクスト群にかかわる二度の大きなシンポジウムを成功させ、定期的に欧米の著名な研究者を講演に招聘した。その記録はいずれも「Sites: Journal of Studies for the Integrated Text Science」に翻訳されている。以下に掲載する内容は、いずれも中世史に関わるもののみを選り抜いている。

第1回国際研究集会「中世宗教テクストの世界へ 中世寺院聖教テクストの生成と展開」(名古屋大学 2003年2月21日-23日)
 ジャン=ルー・ルメートル「西欧中世修道院の日常と聖人伝を読むこと」             

第4回国際研究集会「歴史テクストの生成:テクスト/コンテクスト」(名古屋大学 2004年9月16-17日)
第1部:古代世界におけるテクストとその社会的文脈

第2部:テクスト生成とコンテクスト化の諸相:中世初期ヨーロッパ
 ミシェル・ソー「4世紀から11世紀西洋における司教史の生成論的アプローチ:地方史的コンテクストと普遍史的コンテクスト」
 佐藤彰一「『歴史十書』におけるテクスト分割システムとそのコンテクスト性」
 丹下榮「中世初期文書における修道院財産の記録様式について」
 加納修「勅令の生成のその証書的コンテクスト」

第3部:領主制のもとのテクスト生成
 ドミニク・バルテルミィ「1060年前後ロワール地方の叙述型ノティティアにおける封建戦争の谺」
 岡崎敦「11世紀パリ司教座教会における文書実践 テクストとコンテクストの生成」
 足立孝「11世紀アラゴン地方における紛争解決の文書:生成論的アプローチ」
 ミシェル・ジンメルマン「実効性のあるテクスト:中世歴史テクストにおける言表化・顕在化・記憶化 カタルーニャの記憶が教えるもの(10世紀~12世紀)」

第8回国際研究集会「歴史・フィクション・表象」(エクス・アン・プロヴァンス大学 2006年10月23-25日)
 ピエール・リシェ「西暦千年頃における司教のイメージ」
 クロード・カロッツィ「フランク族の起源表象(6-7世紀)」
 ユゲット・タヴィアーニ=カロッツィ「歴史の例示性 11世紀西洋の歴史家たち」
 佐藤彰一「トゥールのグレゴリウスによるメロヴィング王家の結婚をめぐる過去と現在 言表と語りによる構築」

第10回国際研究集会「歴史・地図テクストの生成:テクスト/コンテクスト2」(名古屋大学 2006年11月17日)
 佐藤彰一「メロヴィング期聖人伝における地誌記述についての考察:ルアン司教区の場合」
 アルメル・クルアン(鎌田隆行訳)「中世アルル周辺における水力利用施設の配置 史料とコンテクスト」
 パトリック・ゴーティエ=ダルシェ(永田道弘訳)「中世における地図表象 コンテクストと機能」
 フランソワ・ブガール(西村善矢訳)「9~11世紀イタリアにおける裁判一件記録の生成とコンテクスト」
 西村善矢「10・11世紀サン・サルヴァトーレ修道院(モンテ・アミアータ)における記録作成の変動 リヴェッロ文書から地代帳へ」
 金尾健美「1420年ディジョンで執筆された書簡に見る貨幣と貨幣政策」

本書には前身があり、そこでは1990年から2000年にかけて名古屋大学西洋史研究室の中世史セミナーで行われた講演が纏められている。
佐藤彰一編『西洋中世史セミナー講演報告集』(名古屋大学大学院文学研究か西洋史学研究室 2000), 150頁
 モニク・ブーラン(佐藤彰一訳)「中世南フランスにおける村落共同体の基本性格」
 ピエール・リシェ(佐藤彰一訳)「サン・ベルナールはいかに同時代のキリスト教世界を認識したか」
 ピエール・リシェ(佐藤彰一訳)「中世の子供再発見」
 ミシェル・ビュール(佐藤彰一訳)「祖先の記憶と批判的系譜研究」
 ミシェル・ビュール(佐藤彰一訳)「土塁城塞の形態論と類型論(10―12世紀)」
 スーザン・レノルズ(佐藤彰一訳)「『知行と封臣』以後」
 ピエール・トゥベール(佐藤彰一訳)「中世史家と史料問題」
 ピーター・ブラウン(佐藤彰一訳)「栄光につつまれた死 死と死後の世界、400-700年」
 ハルトムート・アツマ(佐藤彰一訳)「メロヴィング社会の文書と権力」
 ハルトムート・アツマ(佐藤彰一訳)「フランク王国の宝物庫・遺言状・資財帳 オーセールの場合」
 ハルトムート・アツマ(加納修訳)「ローマ法と部族法典」
 ジャン・ヴザン(佐藤彰一・瀬戸直彦訳)「古書体学と歴史学 シナイ半島のラテン語写本」

残念ながら本書はISBNがついているわけではない。したがって一般で入手することはできない。これは大変もったいないことであると思う。

このような息の長い研究交流は、ただ金を注ぎ込めば成功するというわけではない。結局は個人間のつながりがものを言う。意見の交換を伴うコロキウムは、呼ぶ方にも呼ばれる方にも相当な緊張を強いるが、学問的に得るものは、単なる講演とは比べ物にならないくらい大きい。


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