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中世のイギリス [Classics in History]


エドマンド・キング(吉武憲司監訳/吉武憲司・赤江雄一・高森彰弘訳)
中世のイギリス
慶應義塾大学出版会 2006年 401+38頁

凡例
地図一覧

序章
第一章 ノルマン征服と植民定住 1066-1106年
第二章 宮廷生活 1106-1154年
第三章 アンジュー帝国 1154-1204年
第四章 マグナ・カルタとその後 1204-1258年
第五章 内乱と復興 1258-1307年
第六章 外交と終焉 1307-1349年
第七章 黒死病の後 1349-1399年
第八章 ランカスター家とヨーク家 1399-1485年
 
訳者あとがき
訳註
イングランド王家の系図
中世後期イングランドの中央行政組織図
中世イングランドの貨幣単位と度量衡
図版一覧
参考文献
索引 

Edmund King
Medieval England, 1066-1485.
Oxford: Phaidon, 1988, 272 p.

* * * * * * * * * *

ノルマン征服からボズワースの戦いまでの抑制された歴史絵巻とでもいうべきか。史料証言や図版もしばしば提示され、歴史書を読んでいるのだという実感がある。訳文は非常に読みやすい。中世イギリスに興味を持つ学部生が読むのに適している。3800円という値段もこの装丁と頁数にしては控えめで、飲み会を一回休めば買える。

しかし本書はイギリス史である。決してブリテン史ではない。そして大方は政治史である。そういった意味で、新奇な構成や分析というよりは、古典的叙述という印象を受ける。

かつてステントンやポウィックが執筆したことで不朽のシリーズとなったオックスフォード版イギリス史は、最近脂ののった研究者の筆により書き換えられた。本書の文献目録でも推薦されている。
Robert Bartlett, England under the Norman and Angevin Kings, 1075-1225. Oxford: Oxford UP, 2000, 772 p.
Michael Prestwich, Plantagenet England, 1225-1360. Oxford: Oxford UP, 2005, 638 p.
Gerald Harriss, Shaping the Nation: England 1360-1461. Oxford: Oxford UP. 2005, 705 p.

アングロサクソンの巻は予定に入っていないのだろうか。政治行政史を重視するというのであれば、サイモン・ケインズが最適だと思う。

社会史的な視点を持つ通史として目に付いたのは、
P. J. P. Goldberg, Medieval England: A Social History 1250-1550. London: Edward Arnold, 2004, 310 p.

しかし、個別研究の趨勢としてはイングランド史ではなく、スコットランド、アイルランド、ウェールズを射程に入れたブリテン史になっているように思う。ただし、総合作品となるとまだ数が少ないかもしれない。「Short Oxford History of the British Isles」に加えて、例えば、
Donald Matthew, Britain and the Continent 1000-1300(Britain and Europe). London: Edawrd Arnold, 2005, 326 p.

便利なハンドブックとして、
S. H. Rigby(ed.), A Companion to Britain in the Later Middle Ages(Blackwell Companions to British History). Oxford: Blackwell, 2003, 640 p.

同じシリーズで、ポーリーン・スタッフォードの編集により中世前期のものも予定にあがっている。これは楽しみ。ローマン・ブリテンは既にある。
Malcom Todd(ed.), Companion to Roman Britain(Blackwell Companions to British History). Oxford: Blackwell, 2003, 560 p.

中世イングランドとスカンディナヴィアの関係について私の知るところは少ない。
Henry Goddard Leach, Angevin Britain and Scandinavia. Cambridge, Mass.: Harvard UP, 1921, ix+412 p.

しばしば引かれる上記書以降、まとまった研究はあるのだろうか。特に経済史の分野ではあってもよさそうなものだが、耳にしない。ハンザ商館のあったベルゲンとロンドン間の関係など、大切だと思うのだが。

私は本書中にある図94がどうしても忘れられない。控えめにいっても馬鹿にしている。2ちゃんのAAに近い。誰や、君は。


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