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The New Cambridge Medieval History [Medieval Scandinavia]


David Abulafia et al.(eds.)
The New Cambridge Medieval History, 7 vols.
Cambridge: Cambridge UP, 1995-2005

Lotte Hedeager, Scandinavia, in: Paul Fouracre(ed.), vol. 1: c.500-c.700(2005), pp. 496-523.
Niels Lund, Scandinavia, c. 700-1066, in: Rosamund Mckitterick(ed.), vol. 2: c.700-c.900(1995), pp. 202-27.
Peter H. Sawyer, Scandinavia in the eleventh and twelfth centuries, in: David Luscomb & Jonathan Riley-Smith(ed.), vol. 4-2: c.1200-1319(2003), pp. 290-303.
Sverre Bagge, The Scandinavian kingdoms, in: David Abulafia(ed.), vol. 5: c.1198-c.1300(1999), pp. 720-42.
S. C. Rowell, Baltic Europe, in: Michael Jones(ed.), vol. 6: c.1300-c.1415(2000), pp. 699-734.
Thomas Riis, The states of Scandinavia, c.1390-1536, in: Christopher Allmand(ed.), vol. 7: c.1415-c.1500(1998), pp. 671-706.

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『新版ケンブリッジ中世史』は、全ての中世史研究者が最初に参照すべきハンドブックである。全てとはいわないが、ほとんどの項目では、叙述内容にせよ参考文献にせよ最新の情報を、現段階で最高と考えられる執筆者が提供してくれる。私は自分の専門の関係上、第1巻から第3巻までの論考は、地域やテーマに関わらずかなり目を通した。一論考20ページから30ページという長さは、引用するには短すぎるが、導入としては申し分ない。もっと知りたければ参考文献を繰ればいい。

北欧該当部は上記六人が執筆する。第6巻のローウェルを除き、北欧中世研究の中心に座す(座していた)人たちである。ローウェルはリトアニア史が専門であり、彼の論考は必ずしも北欧に十分なページを割いているわけではない。ただ、カルマル連合を迎える前後のバルト海世界の大まかな動きを知ることができるという点では、悪くない論考といえる。中世バルト海史の通史は、あってもよさそうなものであるが、私は見たことがない。ともかく、この六人の執筆者の論考をひとまとめにして読めば、大まかな北欧中世像を描き出すことができる。

以前ここにも書いたが、2003年に同じケンブリッジ大学から『北欧史』の叢書もでている。執筆人の中でソーヤーとバッゲは、『新版ケンブリッジ中世史』にも寄稿している。ただ、『北欧史』でソーヤーは妻とともに「Scandinavia enters Christian Europe」を、バッゲは「Ideologies and mentalities」を担当しているので、内容は重なっていない。どっちがいいということはできないが、『北欧史』は各国史のにおいが強く、『中世史』はヨーロッパに対する北欧という地域という意識が強いように思う。北欧史専攻者は両方とも読むべきだと思うが、その他の地域の専攻者で、北欧のことを知りたいと思う者は、とりあえず『中世史』をまとめ読みしてみればよいのではと思う。

さて、この叢書、新版というからには、旧版も存在する。
J. Bury(ed.), The Cambridge Medieval History, 8 vols., Cambridge: Cambridge UP, 1911-36.

たしかに叙述内容は新版に取って代わられたが、付属の地図はいまだに使える。この叢書に関しては面白い論文がある。
Peter Linehan, The making of the Cambridge Medieval History, Speculum 57(1982), pp. 463-94.

リネハンは中世スペイン史研究者としてつとに著名であるが、新版の編者でもある。この論文は、ケンブリッジ大学出版局に保存されていた、旧版作成時の編者と執筆者との間に交わされた書簡に基づく研究である。ケンブリッジ大学出版局から出版されるのに編者はオックスフォードの人間ばかりである、スペインのさる高名な中世史家に執筆を依頼するとペーペーの弟子の書いた原稿を送ってくる、時節柄ドイツの研究者と接触できないので国内の研究者に叙任権闘争該当部の執筆を依頼したら、「ドイツ語の勉強から始めるからちょっとまってくれ」…。旧版は、古代史と近代史の企画が成功したために中世史もということであったのだろうが、それにしてもひどい。今風に言えば、これはひどい、か。まあ、結果としてそれなりに役に立つ叢書になったわけであるが、楽屋裏は大変であったということである。これに比べれば新版のできは遥かによい。地域やテーマも広がり、執筆人も欧米全土に広がっている。当然研究水準も段違いである。70年のタイムラグが生み出した差は、大きい。


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