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Early Medieval Settlements [Early Middle Ages]


Helena Hamelow
Early Medieval Settlements. The Archaeology of Rural Communities in Northwest Europe 400-900.
Oxford: Oxford UP, 2002, 225 p.

List of illustrations
1. Rural communities in early medieval Europe: archaeological approaches and frameworks
2. Houses and households: the archaeology of buildings
3. Settlement structure and social space
4. Land and power: settlements in their territorial context
5. The forces of production: crop and animal husbandry
6. Rural centres, trade, and non-agrarian production
7. Epilogue: trajectories and turning-points

References
Index

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著者は、オックスフォード大学セント・クロス・カレッジに所属する。アングロサクソン時代の考古学が専門であり、現在ウェブ上に「The Novum Inventorium Sepulchrale」という、アングロサクソン期の墓地のデータベースを構築中である。知らなかったが、2006年9月に、立命館大学のCOEの企画「モノとイメージはどう人々を作るのか?」というシンポジウムで来日していたらしい。いけばよかった。

著者は基本的にアングロサクソンをフィールドとするが、本書は、低地地方や北欧までも射程に入れて、「北西ヨーロッパ」という空間的枠組みの中で、農村共同体のあり方の類型化を試みる。農村空間の再現と地域間比較は、マルク・ブロックの『フランス農村史の基本性格』以来、農村史の一つの主要トピックであったが、初期中世に関しては、第二次大戦後、発掘とその調査報告書の公刊が進んだ。それも、ただ食糧を生産する耕地に留まることなく、耕地を含めた農村生活空間(フランスであればhabitatとでもいうのであろうか)全体の復元である。フランスに限らず、初期中世にあっては、人口のほとんどが農村に居住していたことを考えれば、政治史であれ行政史であれ、本書の提示する農村空間を念頭に置きながら、自らの議論を組み立てていくことが必要となるだろう。

なお、北欧に関しては議論の多くをユラン半島のヴォヴァッセの調査記録に負っている。デンマーク国立博物館のステン・ヴァスによる調査であるが、デンマークは最高峰の標高がたかだか173メートルのなだらかな地理空間であり、これをもって「北欧」を代表させるわけにはいかない。北欧の中でもデンマークは早い段階から大陸世界との接触を繰り返しており、自然地理条件も人文地理条件も極端に異なるスカンディナヴィア半島にあるノルウェーやスウェーデンとその歴史展開過程を同一することは難しい。北欧の農村史の実態を知りたければ、北欧語で書かれている調査記録を渉猟せねばならず、これは、現地の研究者でなければなかなかできない仕事である。現在北欧の中世農村研究の第一人者となるのは、ストックホルムのヤンケン・ミュルダルかフィンランドのエリアス・オルマンだと思うが、彼らがハムロウのように生活空間まで射程に入れた北欧農村論をまとめてくれれば、どれほどよいだろうかと思う。オルマンはケンブリッジ版のスカンディナヴィア史に、一応の中世盛期から後期にかけての農村通史をものしているが、ただ食料の生産空間として捉えているという点で、私には納得のいくものではなかった。

なお、同時期の同地域設定による「都市」については、ベルギーの歴史家アドリアン・フルフュルストが、その形成過程と類型化に関する試論を公にしている。
A・フルフュルスト(森本芳樹監訳)『中世都市の形成 北西ヨーロッパ』(岩波書店 2001), 234頁

都市と農村を峻別することは、設定する条件によっては意味があるが、最終的は両者を一つにまとめなければならないのだと思う。

ところで、居住空間ということで思い出した。関東と関西の賃借りの違いである。もう関東に人生の三分の一以上住んだことになるが、関東で部屋を借りる場合、初期費用として、一ヶ月分の家賃のほかに、敷金二ヶ月、礼金二ヶ月、不動産屋への仲介手数料一ヶ月がまず必要となる。最近では敷金や礼金が不必要なところも増えたが、基本セットはいま述べたとおりである。これに対して関西では、一か月分の家賃のほかに、保証金が半年分ほど必要となる。保証金は、家を出る時に返還されるが、そのなかから敷引きとよばれるものが結構な額で(たとえば保証金が70万の場合敷引きが50万とか)差し引かれる。敷引とは結局のところ礼金であり、関東と関西でなんでこんなに呼び方が違うのかよくわからないが、敷引きの大きさから見ると、関西はおいそれと引越しをすることはできない。ただ、関東の場合は二年ごとに契約の更改があり、そのたびごとに大家と不動産屋に一か月分の家賃を払わねばならないが、関西はこれがない(この前裁判沙汰になったので新聞に出ていたが、これは東京と京都の習慣らしい。なんでかね)。関西は一箇所に長く住んでほしいようである。ちなみに、公団住宅は、全国一律敷金三か月分のみである。古いものでも中はリフォームしてあり、十分使用に耐えうる。日本人はなぜか新築に住みたがるので、場所によってはがらがらである。
 東京に出てきて驚いたのは、十万を超える賃貸住宅に住んでいる学生がごろごろいたことである。彼らが自分で稼いでいるはずもなく、親が出資しているわけである。親子ともどもアホかと思う。


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