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フランシスカン研究 [Medieval Spirituality]


坂口昂吉・前川登・福田誠二編
フランシスカン研究
東京フランシスカン研究所/聖母の騎士社 2006-

フランシスカン研究1:フランシスカン霊性研究会講演集(2006), 271頁
創刊に際して・フランシスカン研究  前川登
序文・フランシスカン霊性研究会  坂口昂吉
1.聖フランシスコとその時代  坂口昂吉
2.聖ベネディクトゥスとその時代  坂口昂吉
3.イタリアの中世フランシスコ会史研究の現状  伊能哲大
4.下村寅太郎著《アッシジのフランシス研究》について  福田誠二
5.聖ボナヴェントゥラによるアシジの聖フランシスコの大伝記について  福田誠二
6.神への賛美の励まし(Exhortatio ad Laudem Dei)  伊能哲大
7.聖フランシスコの観想について  カリスト・スイニー
8.今日の不安な社会の中でフランシスコと歩む観想の道  大西房子
9.聖フランシスコとイスラムについて  山谷篤
10.アジアのフランシスカンにおける活動と霊性  ルカ・ホルスティンク
11.フランシスカンのカリスマについて  山谷篤
12.パドヴァの聖アントニオにおける祈り  手塚奈々子
13.聖書に基づく聖ボナヴェントゥラの神学  前川登
14.聖ドミニコの霊性と説教者兄弟会(ドミニコ会)  田中信明
15.コルトナ・ラウダにおけるマリア賛歌  杉本ゆり
聖フランシスコの霊性に関する日本語文献リスト
あとがき  福田誠二
執筆者紹介
聖フランシスコの年表

フランシスカン研究2:フランシスコ会学派(上)―フランシスコからベーコン―(2007), 373頁
序文 『フランシスカン研究』創刊に寄せて  W.デットロッフ
序論 フランシスコ会学派の思想  坂口 昂吉
1.フィオレのヨアキム(Joachim de Flore)の生涯と思想  坂口 昂吉
2.アシジのフランシスコの生涯─C.フルゴーニの研究を中心に─  三森 のぞみ
3.アシジのフランシスコの書き物─出版と研究─  三邊 マリ子
4.アシジのクララ─その生涯とフランシスカン的独創性─  木村 晶子
5.アシジのクララ研究報告─クラリアン問題─  三邊 マリ子
6.パドヴァのアントニオの生涯と神学思想  手塚 奈々子
7.シュパイヤーのユリアヌスの詩と音楽  杉本 ゆり
8.ヘールズのアレクサンデルの生涯と思想  須藤 和夫
9.司教ロバート・グロステストの生涯と思想  福田 誠二
10.ロジャー・ベーコンの生涯と思想  浦 英雄
執筆者紹介
フランシスカン年表
英文サマリー
英文目次

フランシスカン研究3:フランシスコ会学派(下)―ボナヴェントゥラからベルナルディノ―(2007), 407頁
序文 『フランシスコ会学派』  H.シュナイダー
11.ボナヴェントゥラの哲学思想  坂口 昂吉
12.ボナヴェントゥラの神秘思想とその実践的射程  長倉 久子
13.ライムンドゥス・ルルスの思想と可能性  阿部 仲麻呂
14.フランシスコ会士ペトルス・ヨハニス・オリヴィ  神崎 忠昭
15.カサレのウベルティノの人生とヨセフ論  前川 登
16.ヨハネス・ドゥンス・スコトゥスによるストア哲学の神学化  八木 雄二
17.ヨハネス・ドゥンス・スコトゥスの神学  福田 誠二
18.ウィリアム・オッカムによる哲学の革新  八木 雄二
19.ウィリアム・オッカムにおける神の属性について  小林 公
20.シエナのベルナルディノの生涯とイエスの御名への崇敬  三邊 マリ子
あとがき
執筆者紹介
フランシスカン年表
英文サマリー
英文目次

* * * * * * * * * *

日本におけるフランシスコ会関係者による研究誌。何かをぐぐっているうちに偶然発見した。執筆者には大学教員が多くクオリティは高い。とりわけ伊能哲大や三邊マリ子による論考は研究誌の批判的整理となっており、一般史家にとっても価値は高い。こんなものはすぐに版元切れになって入手不可となるので、フランシスコ会に関心のある者はただちに入手すべきである。

フランチェスコ、ボナヴェントゥラ、ドンス・スコトゥス、オッカムといった人物の思想については日本語でも立派な著作がある。が、それ以外のフランシスコ会士に関してはその名前すら知られることは少ない。私も「え、この人フランシスコ会士だったの」と初めて知った人物もいる。特にイスラーム思想や結合術との関連でしばしば口の端に上るライムンドゥス・ルルスは、日本語で読めるものがほとんどなく貴重である。ただしこの阿倍仲麻呂による論考は頁数の割に小項目が多すぎるので、できれば一冊の本になるまで膨らませてほしい。

私の知る限り日本語で読めるフランシスコ会の歴史書としては、
川下勝『フランシスカニズムの流れ』(聖母文庫 1988)
カエタン・エッサー(伊能哲大訳)『フランシスコ会の始まり 歴史が語る小さき兄弟会の初期理念』(新世社 1993)
坂口昂吉『中世の人間観と歴史 フランシスコ・ヨアキム・ボナヴェントゥラ』(創文社 1999)

が、史料翻訳として、
上智大学中世思想研究所監訳『中世思想原典集成12 フランシスコ会学派』(平凡社 2001)

がある。また中世のフランシスコ会研究に関する極めて充実したホームページとして「フランシスコ会史と中世典礼」がある。日本では未紹介の文献や史料の翻訳もある。今や紙媒体だけではなくウェブの情報もさらっておかなければならない時代となった。いずれグーグル・スカラーが恐るべき力を発揮するようになるだろう。今は英語文献が中心なので前近代を扱う人文学にはさほど影響を与えているようにも見えないが、大学人それも有力大学に所属し金を持った研究者のみが知識を独占する時代は終焉を迎える。といっても結局は語学の修練を積み意味あるデータを正確に拾い上げることが出来なければ宝の持ち腐れとなることは明らかで、データの取捨選択とそれを用いたストーリーテリングが確実にできるものがファースト・クラスの研究者として生き残る。

なんにせよキリスト教系出版社の出版物は、雑誌を含めいずれも一般書店では入手しがたい。私はどこに頼んだのかというと、女子パウロ会のオンラインショップである。修道女も電脳化。

ところでフランシスコ会に関してはこれで基本文献が出たことになるが、ドミニコ会はどうなのだろうか。調べたところドミニコ会の中心は愛媛の愛光学園の経営母体らしいが、研究書の文献目録をさらってもいまいち学問的な著作を見出すことができない。思想史的もしくは社会史的にはドミニコ会のほうがインパクトがあるように思うのだが。駒場のとある先生はドミニコ会の学僧だと聞いたことがあるが、書いているものを読む限り思想史というよりも哲学。


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