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ヴィルヘルム・ハンマースホイ [Arts & Industry]

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ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情
国立西洋美術館 2008年 199頁

静かなる詩情 ヴィルヘルム・ハンマースホイ(フェリックス・クレマー)
ヴィルヘルム・ハンマースホイ デンマーク黄金期美術を越えて(アネ=ビアギデ・フォンスマーク)
物語のない日常 ハンマースホイとオランダ17世紀の室内画を隔てるものと結びつけるもの(佐藤直樹)

カタログ
1.ある芸術家の誕生
2.建築と風景
3.肖像
4.人のいる室内
5.誰もいない室内
6.同時代のデンマーク美術 ピーダ・イルステズとカール・ホルスーウ

年譜
ヴィルヘルム・ハンマースホイ
ピーダ・イルステズ
アール・ホルスーウ

展覧会歴
主要参考文献
出品作品リスト

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上京したついでに久しぶりに西洋美術館に足を運んだ。あちこちに「西洋美術館を世界遺産に」という幟が立っていた。こうやって地域住民と一体となって運動をしなければ世界遺産に登録されにくいのかもしれないが、見苦しい。これは現館長の方針ですか。ユネスコもIOCといっしょかね。

そんな外部の景観はともかく、展覧会自体は素晴らしかった。西洋美術館の企画展は、かつてのバーンズ展ほどではないにせよ、正気の沙汰とは思えないような人が押しかけてじっくり絵を見ることができないことがしばしばあった。今回はデンマークのはじめて聞くような画家であったせいか、人もまばらで落ち着いてまわることができた。17世紀オランダの画風から影響を受けているようで、まあそうなのかも知れないが、本当は目に入ったはずの余計なものをそぎ落として、執拗に妻の後姿と部屋を描くハンマースホイ(現地読みだとヴィレム・ハマスホイくらいじゃないだろうか)のメンタリティを、そんな様式論的説明に還元すべきではないと感じた。これは美術史の方法論にも関わる問題であるが。

「ライアの風景」(作品番号35)は、歴史家にとっては興味深いので葉書も買った。『ベーオウルフ』を読む人にも馴染みのある地名である。現実がどうであったのかわかってはいないのだが、中世デンマークにとっての「記憶の場」である。

北欧の絵画が日本に紹介されることはそうあることではない。私の知る限り以前東京ステーションギャラリーで「スカンディナビア風景画展」があったくらいである。これも素晴らしい展覧会だった。専門家でもなければダールとかケプケとか耳にすることはないだろうが、私は彼らの風景画を見ているととても落ち着く。コペンハーゲンにいたとき、特に冬は皆さん家にこもっているので留学生にはまあ暇で暇で、気分転換に時間を潰す場所を探すのに苦労した。水曜日に国立博物館と国立美術館、日曜日にカールスベア美術館が無料だったのでよく足を運んだ。デンマークの皆さんも低地地方やイタリアの派手な絵画のほうが好きなのか、暖色の風景画の部屋はあまり人がいなかった。

なんでこんな展覧会が日本で開かれたのか訝しかったのだが、西洋美術館がハンマースホイの作品を一点持っているということで納得した。展覧会は12月7日までなので、まだ行っていない方はぜひ足を運ぶべきである。私は別にデンマーク政府の回し者でも西洋美術館の関係者でもないが、ルネサンスや印象派だけがヨーロッパ絵画ではないことを知るとてもよい機会だと思う。

ところでカタログは通信販売もしているが、送料900円ってどういうことですか。生きたタラバガニでも送るつもりですか。

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