SSブログ

『告白』〈わたし〉を語ること… [Early Middle Ages]

アウグスティヌス『告白』.jpg
松崎一平
アウグスティヌス『告白』〈わたし〉を語ること…(書物誕生)
岩波書店 2009年, vi+247頁

プロローグ
第1部 書物の旅路 あたらしい叙事詩か?
第1章 どのような書物か
第2章 書かれた時期と背景
第3章 なぜ、だれにむけて書かれたのか
第4章 『告白』の読者たち

第2部 作品世界を読む 愛にむすばれた社会をめざして
第1章 神と人間 創造、原罪、救済
第2章 幼年時代と少年時代
第3章 梨を盗む
第4章 『ホルテンシウス』体験とマニ教徒時代
第5章 友との日々 回心
第6章 母との日々 見神
第7章 第10巻と『聖書について』の3巻 真理

エピローグ
参考文献

* * * * * * * * * *

昔、岩波文庫で読んで、いたく感動した。古典はスカスカの現代小説ほどにははやいスピードで頁をめくることができないが、それだけ一文一文が重い。ただ、一種の職業病だと思うが、引っ掛かる表現に出会うと原文のラテン語は何なのだと考えるので、よけいに遅くなる。そういう意味では、ローブやビュデのような対訳がいいよな。

『告白』そのものをまずは読むべきだと思うが、そのあとにこのような解説本があるのは結構なことである。第一部がコンテクスト、第二部がテクストの分析。著者はかの故山田晶の教え子だが、ただ哲学的な読み方だけではなく、歴史的な読み方も押さえてある。だから、歴史家でも大丈夫。著者は30年も『告白』と付き合っているので、随所に面白い指摘がある。音楽性とか。日本の哲学者が前近代人の著作論やその伝記を書いた場合、なぜか生まれてもいないマルクスだのハイデガーだのフーコーだのデリダだのと結び付けたがるが、そういう人文学として無意味なことは勘弁してほしい。近代人は古代人から大いに学ぶが、古代人は近代人からは何も学んでないのだから。

アウグスティヌスの伝記的著作は幾つか読んだが、これまで見落としていた点を発見した。385年、アウグスティヌス31歳の年である。「…ある少女に求婚し、その年齢はまだ結婚適齢に二年足りなかった…」(13.23)。当時の結婚適齢とは男性14歳、女性12歳。さすれば、10歳!アウグスティヌスよ…。

なお、このシリーズ「書物誕生」は京大閥による。東方見聞録とルクレティウスは買って読むでしょう。京都も京都大学も、よくもわるくも時間の止まった世界なので、古典は強い。すべての世界に同じ計測時間が流れる必要もないので、それでいいのかなとも思う。京都大学学術出版会の「西洋古典叢書」も「近代社会思想コレクション」もとてもありがたい。東大は、一匹狼が多いのかな。

共通テーマ:学問
Introduction aux sou..神秘の中世王国 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。