SSブログ

古典の継承者たち [Literature & Philology]


L・D・レイノルズ/N・G・ウィルソン(西村賀子・吉武純夫訳)
古典の継承者たち ギリシア・ラテン語テクストの伝承にみる文化史
国文社 1996年 436+xxxix頁

序文
第一章 古代
第二章 東のギリシア語圏
第三章 西のラテン語圏
第四章 ルネサンス
第五章 ルネサンス以降
第六章 テクスト批判

略語表
原注
訳者あとがき
写本索引
人名・作品名索引
事項・地名索引
図版への注

L. D. Reynolds & N. G. Wilson
Scribes and Scholars. A Guide to the Transmission of Greek and Latin Literature.
Oxford: Oxford UP, 3 ed., 1991, 352 p.
 
* * * * * * * * * *
 
現在の中世史家の殆どは欧米の碩学による校訂版を用いて研究を進める。校訂版の元になる写本は中世の修道院に保存され、紆余曲折を経て現在まで伝わる。しかし伝わらなかったもののほうが多い。アリストテレスの『詩学』が完全な形で今に伝わっていたならば、エーコの小説が構想されることもなかったのかもしれない。
本書は古典テクストの伝承に限定されるが、これを中世テクストでやればどうなるのだろう。膨大に過ぎて一冊の本に収まるはずもないが、実は重要な問題でもある。ベーオウルフ・テクストの成立がいつであるのかも大切であるが、その写本が紀元千年前後に数多く作成されている意味も考えるべきであろう。

欧州で写本に触れる機会が何度かあったが、現物から得られる情報は校訂版の比ではない。支持体の手触り、インクの色、段組、字形、彩色画、いずれも校訂版で再現する事は困難である。もちろん、活字化された校訂版は便利だし、テクストに基づく研究はそれで十分なのだけれども。
Ludwig Traube, Geschichte der Paläographie, in Id., Vorlesungen und Ahandlungen 1, München, 1909, S. 13-80.

かつての中世史家は、写本に直接当たり、その写本を校訂し、そして歴史学としての論文を仕上げた。19世紀後半から20世紀初頭の大歴史家たちが屹立しているように見えるのは、写本という一次情報にまでいつも立ち戻っていたからであろうか。フュステル・ド・クランジュ(1830-89)やゲオルク・ヴァイツ(1813-86)がなお参照されうるのは、その論理構成力もさることながら、史料を嘗め尽くすように読み込んだ形跡を叙述の中に認める事ができるからであろう。私などには逆立ちしても真似をすることができない。
クーランジュ(明比達朗訳)『古代フランス土地制度論(上)(下)』(日本評論社:世界古典文庫 1949), 238+238頁
フュステル・ドゥ・クーランンジュ(明比達朗訳)『フランス封建制度起源論』(御茶の水書房 1956), 428頁


nice!(0) 
共通テーマ:学問

nice! 0

Finland i medeltiden..The Oxford Companion.. ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。