死者と生きる中世 [Early Middle Ages]
パトリック・ギアリ(杉崎泰一郎訳)
死者と生きる中世 ヨーロッパ封建社会における死生観の変遷
白水社 1999年 279+32頁
序
第1部 過去を読む
第1章 聖人伝研究の現在
第2章 考古学資料の活用
第2部 死者と表象
第3章 カール大帝の幻視
第4章 死者との贈与交換
第3う 死者との交渉
第5章 聖人を辱める儀式
第6章 聖人に対する恫喝
第7章 紛争に満ちた中世フランス社会
第4部 聖人の再生産
第8章 聖人の礼拝所と巡礼
第9章 聖遺物の取引
第10章 商品としての聖遺物
第5部 聖者が求めたもの
第11章 アティラの聖女ヘレナとトロワのカテドラル
第12章 東方三博士とミラノ
訳者あとがき
原注
索引
Patirck J. Geary, Living with the Dead in the Middle Ages. Cornell UP, 1995, 273 p.
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1948年生まれの著者はUCLAの教授。アメリカにおける初期中世史の牽引者である。来日講演が決まった。
パトリック・ギアリ「ヨーロッパ・ナショナリズムと過去を統御する戦い」(「統合テクスト科学の構築」SITES講演会)
日時:2006年11月24日(金)15:00 ~
場所:名古屋大学文学研究科1階大会議室(通訳あり)
同じ内容で東大でもある。
日時:2006年11月28日(火)15:00~
場所:東京大学本郷キャンパス法文1号館211号教室(会場変更の可能性有り・通訳なし)
内容は中世史にとどまらないようであるが、なぜ東大では通訳なしなのか。
編著は相当あるが著名なメロヴィング朝史として、
Patrick J. Geary, Before France and Germany. The Creation and Transformation of the Merovingian World. Oxford: Oxford UP, 1988
本書は論文集であるが、聖人と死というテーマに絞ってある。第1部は専門家向けであるが、一つ一つの論文がそれ自体で完結しているため、興味のあるものを選んで読むこともできる。もちろん通読しても面白いが。
著者のデビュー作を読んだのは随分昔になる。30歳での出版である。
Patrick Geary, Furta Sacra.Thefts of Relics in the Central Middle Ages. New Jersey: Princeton UP, 1978, 219 p.
聖人の遺物を窃盗して恥じない修道士たちに驚いたものだったが、聖遺物の多くは地中海世界から北ヨーロッパに「輸入」されていたという、聖遺物の地理的偏在に興味をもった。北は経済もさることながら、聖遺物にも貧しい。「粗末に扱われている聖者様をより相応しい御所へお連れ申し上げる」と考える修道士もいれば、チームを組んで窃盗し希少価値の高い聖遺物を売却する集団もいた。北欧は聖オーラヴと並んで聖ラウレンティウス(d. 258)に奉献された教会が多い。ルンドもそうだったように思う。彼は海難からの守護聖人だからとどこかで読んだ。しかしラウレンティウスはローマの聖人であり、とするとやはりローマから「聖なる窃盗」の結果「輸入」された事になるのだろうか。
聖人の事典は拾い読みすると面白い。
David Hugh Farmer, The Oxford Dictionary of Saints. Oxford: Oxford UP, 6 ed. 2004, 579 p.
私の手元にあるのは1992年の第3版であるが、襤褸アパートに下宿していた時ねずみに齧られて本の角がない。洋書なんて美味しいんだろうか。