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The Social Consequences of Literacy in Medieval Scandinavia [Medieval Scandinavia]


Arnved Nedkvitne
The Social Consequences of Literacy in Medieval Scandinavia(Utrecht Studies in Medieval Literacy 11).
Turnhout: Brepols, 2004, 290 p.

Maps
Illustrations
Abbreviations
Preface

Introduction
Ch.1: Literacy before 1200: Religious conformity and a new elite identity
Ch.2: Literacy 1200-1350: The construction of great organizations
Ch.3: Literacy 1350-1536: The emergence of a broad, literate elite
Conclusion

Bibliography
Index

* * * * * * * * * *

著者はオスロ大学の教授であるが、当初は商業史の専門家であった。ハンザ研究では知られた名前であるが、ほとんどの著作はノルウェー語であるため、日本はおろか欧米でも十分に咀嚼されているとは言いがたい。このように本来商業史家である著者の方向転換は、四大ハンザ商館のひとつがあったベルゲンで中世ルーンが発見されたことを大きな契機にすると考えられる。

前近代史におけるリテラシーの研究は前世紀末より相当数の文献を数えることができ、正直私も今何がどうなっているのかわからない。この問題に取り掛かる際にまず読むことを勧められるのが、ペトルス・ラムス(1515-72)の研究者であるオングによる、
W・J・オング(桜井直文他訳)『声の文化と文字の文化』(藤原書店 1991), 405頁

ヨーロッパ中世の分野においても、文字は聖職者の独占物とのナイーブな理解をする者はさすがにもういないであろうが、では各時代の特徴を的確に要約できるかとなると、それはまだ難しい。中世におけるリテラシー研究に大きな影響を与えたのは、言うまでもなく、
Michael Clanchy, From memory to written record: England 1066-1307, 2 ed, Oxford; Blackwell, 1993(1 ed. 1977), xviii+407 p.

である。伝承している資料が少ないからといって実際に生み出された文書が少ないというわけではなく、それどころか中世における国王証書局は膨大な数の文書を生産していたことを立証した。こうした研究は大陸や島嶼部ではやや下火になった感もあるが、北欧の研究はどうも二歩三歩遅れて出てくる。本書が中世北欧のリテラシーに関する初の概論である。なお、近年の研究動向を振り返ったものとして、
Leidulf Melve, Literacy - aurality - orality: a survey of recent research into the orality / literacy complex of the Latin middle ages(600-1500), in: Symbolae Osloensis 78(2003), p. 143-97.

がある。ごく最近、中世末期ノルウェーのリテラシーを扱った研究書が現れた。
Jan R. Hagland, Literacy i norsk seinmellomalder. Oslo: Novus, 2005, 117 p.

手にとっていないので内容はわからないが、著者は中世ルーン研究の第一人者である。おそらくネズクヴィトネの概説の第三章、つまりカルマル合同期を対象にしているのだろう。ルーンのみを扱っているのか、それもとラテン語行政文書まで射程に入れているのか。この時期には俗語による公式文書も増えることから、後者の視点を入れたほうが面白いと思うのだが、どうだろう。>親切な友人がノルウェーで購入してくれた。著者は言語史の専門家であるが、行政文書を用いて博士論文を仕上げており、この小著も行政文書を主として取り上げていた。じっくり読んでみたいと思う。

本書がその一冊を占める叢書「Utrecht Studies in Medieval Literacy」は、リテラシーに関心を持つ向きにとって必読文献を提供する。シリーズ・エディタのマルコ・モスタートはユトレヒト大学の教授で、フルリーのアボンの専門家である。このシリーズの劈頭に、
Marco Mostert(ed.), New Approaches to Medieval Communication. Turnhout: Brepols, 1999, 318 p.

があり、編者自身による「a bibliography of works on medieval communication」には、1580もの文献が挙げられている。リテラシーに留まらず、コミュニケーション全体の問題を論じる。ただし史料的に追うことができるのは主としてリテラシーである点は銘記すべきである。また、最新のスポレト初期中世研究集会の会議録である、
Comunicare e significare nell'alto Medioevo: 15-20 aprile 2004(Settimane di studio del Centro italiano di studi sull'alto Medioevo 52). 2 vols., Spoleto: Presso la sede della fondazione, 2005, xvi+1188 p.

は、モスタートによる論集の延長線上にある。モスタートが初期中世におけるコミュニケーションをめぐる理論的な論考を寄稿している。そして本年度の歴史学研究会大会合同部会のテーマは「前近代におけるメディア」であった。


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