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Monasticism in North-Western Europe, 800-1200 [Medieval Scandinavia]


Tore Nyberg
Monasticism in North-Western Europe, 800-1200.
Aldershot: Ashgate, 2000, 295 p.

List of figures
Preface
List of abbreviations

Introduction
1. The monastic geography of North-Western Europe
2. Early monasticism among Frisians and Saxons
3. The archbishop's options
4. Eleventh-century monasticism: Eastern Denmark
5. Eleventh-century monasticism: Funen and Jutland
6. Eleventh-century monasticism: Norway and Sweden
7. Eleventh-century monasticism: Saxony, Slesvig, Ribe
8. The great period: civil war 1
9. The great period: civil war 2
10. The great period: civil war 3
11. The Valdemarian age 1: 1157 and the coming of competition
12. The Valdemarian age 2: movements among monks
13. The Valdemarian age 3: sons and daughters of St Augustine
14. The Valdemarian age 4: peripheria and conclusion

Appendix: Development of Cistercian foundations in Denmark
Bibliography
Index

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おそらく唯一の北欧修道院史。デンマークのデータが多いが、それは著者であるトーア・ニューベリが、デンマーク史の専門家だからというわけではない。海外における聖ビルギッタ会の研究で学位を取得した著者は、むしろスウェーデンの修道制に強い。ユラン半島が大陸と接するデンマークを経て、ノルウェーやスウェーデンにシトー会をはじめとする修道会が拡大していったという事実を踏まえてのことである。残念ながら、扱われる時期は中世の前半に限られる。北欧における独自の修道制展開を考えるならば、13世紀以降のほうが圧倒的に面白いのだが…。とはいえ、これも翻訳されてしかるべき研究書である。

カロリング期、北欧は「キリスト教世界 Christianitas」の辺縁であった。以前にも書いたが、辺縁だからといってキリスト教と無縁であったという認識は、史料から判断する限り、誤りである。辺縁には辺縁なりのキリスト教との付き合い方があり、それは北欧全体で統一的であったわけでもない。そのキリスト教を北欧にもたらしたのは修道士と商人であり、ヴァイキング時代が終わりを迎える頃、在地住民の信仰対象として在来宗教に優勢となってきた。ロスキレからルンドにかけての空間は、中世デンマーク史の核心部となるが、1151年に聖母マリアに奉献されることでシトー会系修道院となったエスロム修道院も、その一端を担う。シェラン島の北部にあるこの修道院と、ロスキレ近郊のソロ修道院は、資料が比較的残っていることもあり(といっても大陸の修道院に比べれば微々たるものである)、アプローチしやすい。修道院と王権との関係は、研究史上それほど突っ込まれている形跡もなく、ひとつのテーマにはなる。ヴェンド世界へのキリスト教化を推進したのはデンマーク王権であり、フィンランドへはスウェーデン王権が担った。そこには必ず修道院の姿が見え隠れするはずであるが、その役割が歴史叙述に現れることは少ないように思う。

著者はウップサーラ大学で学位を取得した後、デンマークに移り、長らくオーデンセ大学の講師を務めた。北欧の教会、修道院、霊性に関する知識は全て詰まっているのではないかと思うほどの勉強家で、著作も相当数ある。
Tore Nyberg, Birgittinische Klostergründungen des Mittelalters(Bibliotheca historica Lundensis 15). Lund, 1965, 265 S.
Id., Dokumente und Untersuchungen zur inneren Geschichte der drei Birgittenklöster Bayerns 1420-1570. 2 Bd., München, 1972-74, 452+457 S.
Id., Die Kirche in Skandinavien, Mitteleuropäischer und englischer Einfluss im 11. und 12. Jahrhundert. Anfänge der Domkapitel Børglum und Odense in Dänemark(Beiträge zur Geschichte und Quellenkunde des Mittelalters 10). Sigmaringen, 1986, 197 S.

スウェーデンであった研究集会に出席していたときのランチで、目つきの鋭いおじいちゃんに「お前ちょっと来い、一緒に飯を食おう」と言われた。東洋の話でも聞きたいのかと思ってほいほいとついていったのだが、その人こそニューベリであった。となりはブライアン・マクガイア、斜め前にはキム・エスマルクであった。向こうもこちらが北欧の研究動向を知っているので驚いていたようだが(そうでなければわざわざこんな研究集会に来ないと思うが)、私も北欧の修道院研究のエースたちに囲まれて恐縮した。本書の話題も出たのだが、「ドイツ語で書いても今の研究者には読んでもらえないから英語で書いた」と言っていた。弟子と呼べる研究者がいるのかどうか私にはわからないが、同僚や友人による献呈論文集もあり、そこにはアンドレ・ヴォシェやペーター・ディンツェルバッヒャーといった中世霊性研究の光明のごとき名前も見える。
Lars Bisgaard et alii(ed.), Medieval Spirituality in Scandinavia and Europe. A Collection of Essays in Honour of Tore Nyberg. Odense: Odense UP, 2001, 350 p.

挿絵はHolger GarnerによるØm修道院の再建図。ユラン半島のオーフス近郊に位置するエム修道院は、1172年に創建され、宗教改革のあおりを受けて1560年に閉鎖される。現在はその遺構全体が「デンマーク修道院博物館」として公開されている。ニューベリとならびデンマーク修道院研究の導き手であるブライアン・マクガイアは、この修道院の研究から歩みをはじめた。
Brian Patrick McGuire, Conflict and Continuity at Øm Abbey(Opuscula Graecolatina 8).København: Tusculanum, 1976, 152 s.


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