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Pilger, Mirakel und Alltag. Formen des Verhaltens im skandinavischen Mittelalter [Medieval Scandinavia]


Christian Krötzl
Pilger, Mirakel und Alltag. Formen des Verhaltens im skandinavischen Mittelalter(12.-15. Jahrhundert)(Studia Historica 46).
Helsinki: Suomen Historiallinen Seura, 1994, 393 S.

I. Zur Einführung
1. Zur Forschungslage
2. Ansatzpunkte und Fragestellungen
3. Definitionen und Eingrenzungen
4. Raum und Zeit der Untersuchung

II. Heilige, Kanonisation und Mirakelsammlungen
1. Entwicklung des Kanonisationsverhafrens
2. Die Mirakelsammlungen

III. Die skandinavischen Pilger
1. Ziele und Motivationen
2. Ausländische Pilger in Skandinavien
3. Zur Rechtsstellung
4. Formen des Verhaltens

IV. Bittpilgerfahrten und Reliquienmirakel
1. Ausgangssituationen
2. Information und Aufforderung
3. Konkurrenz
4. Die Pilgerfahrt
5. Am Wallhahrtsort

V. Distanzmirakel und Dankpilgerfahrten
1. Ausgangssituationen
2. Aufforderung
3. Konkurrenz
4. Votum
5. Mirakel
6. Vorbereitungsphase
7. Ablauf der Pilgerfahrt
8. Am Wallfahrtsort
9. Informationsvermittlung

VI. Zusammenfassung und Ausblick

Abkürzungen
Bibliographie
Anhang
Register

* * * * * * * * * *

著者はフィンランドを代表する中世史家。現在タンペレ大学の教授をつとめ、フィンランド史というよりも、北欧を中心とした中世教会史を広く研究している。フィンランドは面白い国で、比較的若い国であるにもかかわらず、そしてフィン・ウゴール語族に属するヨーロッパでは特殊な言語を公用としているにもかかわらず、古典語研究が盛んである。と同時に、中世ラテン語研究にも伝統があり、したがってそれを底に敷いた中世研究もしっかりと根を下ろしている。一度フィンランドのヒストリオグラフィも整理してみたいと思うが、日本には雑誌も研究書もほとんどない。

本書は著者の学位論文で、フィンランド教会史の領袖であるケイコ・ピリネンと、ドイツ中世後期教会史の雄ルートヴィヒ・シュムッゲが審査員をつとめている。いわゆる心性史に属する研究であり、北欧各地に点在する聖人の奇跡譚を材料に、奇跡と巡礼の関係を教会地理学的な観点から論じる。フランスやイタリアであればこのような研究は少なからずあるが、北欧では珍しい。北欧内における巡礼対象は、まずノルウェーの聖オーラヴやデンマークの聖クヌーズのような国王聖人が念頭に浮かぶが、ヴァドステナの聖ビルギッタや聖カテリーナ、フィンランドで殉教した聖ヘンリクに対する関心も高い。拾い読みする限りこうした北欧ローカルの聖人が検討の対象のようだが、彼らに比べるともう少しユニヴァーサルな聖人、たとえば聖母マリアや海難の聖人ラウレンティウスへの信仰はどうであったのだろうか。確か北欧の聖人に関するハンドブックがあり、持っていたはずなのだが、例によってどこかに行ってしまった。スウェーデンに限定したものとして、
Tryggve Lundén, Svenska helgon. Stockholm: Verbum, 1973, 272 s.

があり、そこには52名の聖人が列挙されている。各人の簡潔な伝記と資料言及があり、便利。
リンシェーピング司教座に限定したモノグラフとして、
Anders Fröjmark, Mirakler och helgonkult. Linköpings biskopsdöme under senmedeltiden(Studia historica Uppsaliensia 171). Stockholm: Almqvist & Wiksell International, 1992, 216 s.

がある。リンシェーピング司教座はよく引き合いに出されるが、史料が十分に残っているのだろうか。著者のフロイマルクさんにはスウェーデンでお会いしたことがあり、中世人の心性に関する話から、なぜか彼が勤める「高等専門学校」(Högskola i Kalmar)とルンドやウップサーラのような「大学」の違いを説明してもらった。「高等専門学校」は北欧独自の教育機関であり、日本の東海大学はデンマークのそれを手本に創設された。彼によれば、総合大学(University)と単科大学(College)の違いのようなものであり、教師としてやるべきことはあまり変わらないらしい。

クレッツェルと同じく、北欧の巡礼を対象とした研究として、
Lars Andersson, Pilgrimsmärken och vallfart. Medeltida pilgrimskultur i Skandinavien(Lunds Studies in Medieval Archaeology 7). Stockholm: Almqvist & Wiksell International, 1989, 229 s.

がある。考古学者らしく、モノにこだわった研究で、巡礼標の表象やその経済波及効果を論じる。文献史料に依拠するクレッツェルの本と相補的であろうか。

巡礼一般に関する研究は、日本語でもかなりある。ヨーロッパの巡礼といえば、ガリシアの果てに建つサンチャゴ大聖堂。近年の入門書である、
関哲行『スペイン巡礼史 「地の果ての聖地」を辿る』(講談社現代新書 2006), 252頁

は、観光という視点を導入している点で面白い。翻訳もたくさんあるが、一冊あげよというのであれば、
アルフォンス・デュプロン編(田辺保監訳)『サンティヤゴ巡礼の世界』(原書房 1992), ix+372+xip頁

デュプロンは、日本ではあまり知られていないが、20世紀フランスを代表する中世史家の一人。『十字軍の神話』をはじめ、母校の研究室にはいくつか入れてもらった。また小著ながら、
渡邊昌美『巡礼の道 西南ヨーロッパの歴史景観』(中公新書 1980), 257頁

は名著。渡邊は木村尚三郎と同期の西洋中世史研究者であるが、研究文献にせよ一般向けにせよ、彼の著書はいずれも素晴らしい。渡邊と関という新旧二人の巡礼研究者の関わる論文集として、
歴史学研究会編『巡礼と民衆信仰』(地中海世界史4)(青木書店 1999), 348頁

が、日本における巡礼研究の到達点であろうか。購入した当時は知らない話ばかりなので、楽しく読めた。巡礼は普遍的な宗教現象であり、もちろん日本にもある。四国には八十八箇所霊場めぐりという大規模な宗教行事があるが、実は町村単位でも毎年4月の半ばの日曜日に、「お接待」といわれるミニ霊場巡りをおこなう。少なくとも私の出身地やその周辺はそうだった。各自治体が八十八箇所の寺を設定し、地元のおばちゃんたちがそこを訪れた人にご飯やお菓子を振舞うというものである。全てまわると一日20キロくらい歩くことになり、いい運動にはなった。我が田舎は小さな島なので寺が八十八もあるはずもなく、どうするかといえば道端のお地蔵さんを「寺」と称して(本当に「…寺」と名づけられている)、その傍らにみかんや八朔を箱に詰めておいて置くのである。「どうぞご自由におとりください」というわけだが、果物は重いので子供には不人気であった。しかし若年人口の減少が著しい現在、この行事は続いているのだろうか。島の隅から隅まで観光できて面白いんだけどなあ。

写真は、『オーボ・ミサ典書Missale Aboense』の挿絵にみえる聖ヘンリク。聖人伝によれば(同時代史料がない)、聖ヘンリクは、かのニコラス・ブレイクスピアにつき従って北欧を訪れ、ウップサーラ司教に就任すると同時に、非キリスト教世界であったフィンランドに対する宣教の途についた。しかし1154年頃ラッリと呼ばれる現地人に殺害され、殉教者と称される。挿絵の真ん中がヘンリク、足に敷かれているのがラッリ。ところでラッリはなぜ禿げちゃびんなのか。『オーボ・ミサ典書』は1488年、オーボ(フィンランド名トゥルク)司教コンラート・ビッツが、リューベックの書籍商バルトロマイオス・ゴータンに注文した一品。挿絵の右側で跪いている人物が、コンラート。


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