The first Millennium A.D. in Europe and the Mediterranean. An archaeological Essay [Early Middle Ages]
Klavs Randsborg
The first Millennium A.D. in Europe and the Mediterranean. An archaeological Essay.
Cambridge: Cambridge UP, 1991, 230 p.
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List of tables
Preface
Acknowledgements
1. Introduction
2. The historical framework
3. The phisical setting
4. Rural settlement
5. Towns and other centres
6. Production and exchange
7. Society, culture, and mentality
8. Archaeology and historiography
Appendix
References
Index
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著者クラウス・ランスボーは、コペンハーゲン大学付属世界考古学センターの所長をつとめる。現在はギリシアのポロス島の発掘に携わっているようだが、私が滞在していた2001年から2002年は、アフリカで発掘調査をしていたため、学生向きの講義は開講していなかった。名実ともにデンマーク考古学の中心人物であり、先史から中世城塞まで、あらゆる分野に業績を残す。かつてヨハンネス・ブレンステッズがそのような立場にあったが、ブレンステッズが伝統的な編年考古学の雄であるのに対し、ランスボーは「ニュー・アーケオロジー」の申し子である。近年社会科学の分野で喧しい、19世紀以来の方法論的反省にも棹差し、考古学史に関する論文も、自らが主幹となる「Acta Archaeologica」に英語で多数掲載している。
本書は考古学のデータをふんだんに用い、数百年単位でヨーロッパ半島における、とりわけ経済活動の変動を見ている。中世考古学の分野では話題になった本で、ポスト･ローマ期から初期中世における大まかな経済構造の転換を実感するのにはよいように思う。筆者がデンマーク人であるせいか、取り上げられるデータに関して、ヨーロッパの中核地のみならず「辺境」まで収められている点も、評価されてしかるべきであろう。話が大きいので、国王証書や年代記相手にミクロ･ストリアのようなことばかりやっている者にとっては、解毒作用もあるかもしれない。へー、で終わるかもしれないが。
なお、ランスボーはヴァイキング時代デンマークの形成史で学位を取得している。
Klavs Randsborg, The Viking Age in Denmark. The Formation of a State. London: Dcukworth, 1980, 206 p.
「富の蓄積→国家形成」というストーリーがあまりに単純なので、文献からデータをこつこつ拾う歴史家の参考にはならないが、イスラーム銀の流入と途絶の中にデンマークの形成過程を置きなおし、その形成過程を相対化した点は評価できる。歴史家のできることは、まだまだあるけれども。
なお、同じコペンハーゲン大学考古学研究室には、ローマ時代のスカンディナヴィア交易の研究で著名なウッラ・ロン・ハンセンもいる。
Ulla Lund Hansen, Römischer Import im Norden: Warenaustausch zwischen dem Römischen Reich und dem freien Germanien während der Kaiserzeit unter besonderer Berücksichtigung Nordeuropas（Nordiske fortidsminder, Serie B, 10）. København: Kongelige nordiske Oldskriftselskab, 1987, 487 S.
本書はロン･ハンセンがデンマーク語で書いた原稿を、ミュンスター大学のTorsten Capelleがドイツ語に翻訳したもの。英語であればなお良かったのかもしれないが、いずれにせよこれだけの成果を北欧語のくびきから解き放ったのは英断である。
写真はポロス町長と話をするランスボー。
