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From Roman provinces to medieval Kingdoms [Early Middle Ages]


Thomas F. X. Noble(ed.)
From Roman provinces to medieval kingdoms(Rewriting Histories).
London & New York: Routledge, 2006, 402 p.

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Contributors
Series editor's preface
Acknowledgements
Maps
A chronology of Romans and barbarians in Late Antiquity

Introduction: Romasn, barbarians, and the transformation of the Roman Empire, by Thomas F. X. Noble

Part 1: Barbarian ethnicity and identity
1. The crisis of European identity, by Patrick J. Geary
2. Gothic history as historical ethnography, by Herwig Wolfram
3. Origo et religio: ethnic traditions and literature in early medieval texts, by Herwig Wolfram
4. Does the distant past impinge on the invasion age Germans ?, by Walter Goffart
5. Defining the Franks: Frankish origins in early medieval historiography, by Ian Wood
6. Telling the difference: signs of ethnic identity, by Walter Pohl
7. Gender and ethnicity in the early middle ages, by Walter Pohl
8. Grave goods and the ritual expression of identity, by Bonnie Effros

Part 2: Accommodation the Barbarians
9. The barbarians in late antiquity and how they were accomodated in the West, by Walter Goffart
10. Archaeologists and migrations: a problem of attitude ?, Heinrich Härke
11. Movers and shakers: the barbarians and the fall of Rome, by Guy Halsall
12. Foedera and foederati of the fourth century, by Peter J. Heather
13. Cities, taxes, and the accommodation of the barbarians, by Wolf Liebeschütz

Part 3: Barbarians and Romans in Merovingian Gaul
14. The two faces of King Childeric: history, archaeology, historiography, by Stéphane Lebecq
15. Frankish victory celebrations, by Michael McCormick
16. Administration, law, and culture in Merovingian Gaul, by Ian Wood
17. 'Pax et disciplina': Roman public law and the Merovingian state, by Alexander Callander Murray

Index

* * * * * * * * * *

編者は初期中世教皇史で著名な研究者。現在はノートルダム大学中世研究所の所長をつとめる。大陸に比べて英米系の大学は教育システムが厳格であり、所属研究者に研究のみならず教育への参加も強く求められるが、これは受講者の授業料と教育効果に対する公的機関からの補助によってなりたつ、公立大学や私立大学の多い国ゆえの事情であろう。本書のようなアンソロジーも、教育プログラムの一環であるといえる。おそらく同じような意図をもって編まれた論文集に、
Lester K. Little & Barbara H. Rosenwein(eds.), Debating the middle ages: issues and readings. Malden, Mass.: Blackwell, 1998, ix+396 p.

こちらも相当便利な本で、古代末期からルネサンスごろまでの著名論文を集めている。

古代末期から初期中世史に関心を持つものであれば、本書に収録されるいずれの論文(もしくは著書の一部)も、おそらく目にしているはずである。それくらい、著名な研究者の著名な論文の集成である。ガリアをフィールドとしない私ですら全体の半分くらいは既読であり、そのほかの論文も、いたるところで引用される名論文ばかりである。理系で盛んなサイテーション・システムにかければ、必ずや上位に入るだろう。西ローマ帝国の解体から、ゲルマン諸族の侵入を経て、メロヴィング国家の成立という、ヨーロッパの歴史においても類例のないほど根本的な様態変化の起こった時代に関する研究は、歴史家のみならず、考古学者や言語学者も参加することで、いまや百花繚乱の様相を呈しているが、収録論文をあえてエスニシティや同化問題に絞ったのは、アメリカとイギリスの抱える現在進行形の社会状態を反映してのことなのだろうか、とも思う。

この時代の歴史を扱うにあたって、近年の傾向のように思えるのは、歴史学と考古学双方に通じた若手が増えてきたことである。本書にも収録されているギー・ハルソールやボニー・エフロスはその代表格であるが、逆に言えば、最早文献だけ、遺物だけでは、近年の設定問題や要求水準には答えることができなくなっているということなのだろう。もちろん、歴史家の基本は文献史料の文献学的アプローチであり、これは未来永劫変わることはないと思うが、ゲルマン諸族についての記述情報は、とりわけエスニシティ、ジェンダー、経済、物質文化といった問題については沈黙を守っていることが多く、より将来性のある手がかりは墓制や副葬品にある、と信じて接近方法を模索する研究者が今や主流になりつつあるのである。かといって、日本にいる身としては、実際に現場に足を運ぶことはできないので、調査報告を読むのがせいぜいであるが。

個人的には、同時代の宗教と経済についての論集もあればとは思うが…

先日、イタリアに留学している友人と食事を共にする機会を得たとき、英米系と大陸の大学の違いについて話題が出た。印象的だったのは、教授との接し方の違いであった。極論すると、二人称を用いる場合、英米系は相手が教授でも愛称で呼び、大陸系は比較的親しくなっても敬称で呼ぶ。大陸では、学生風情が教授をファーストネームで呼ぶことなど、考えられないという。何も彼女ばかりでなく、似たような話は複数の研究者から体験談として聞いているので、多分そうなのだろう。私も大陸の学者と話すときには、「ドクター」だの「プロフェッサー」だのを自然とつけているような気がする。欧米の学問の世界においては、博士号があるかどうかで、住む世界が違うわけなので、当たり前といえば当たり前なのだが。北欧の大学システムは大陸的だが、人間関係は明らかに英米系であった。なんというか、変に気を使うこともなく、やりやすかった。日本は大陸よりでしょうかね。


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