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中世の牧会者たち [Medieval Spirituality]


C・メラー編(加藤常昭訳)
中世の牧会者たち(魂への配慮の歴史4)
日本基督教団出版局 2001年 266頁
第1章 クレルヴォーのベルナール(ベルナルディン・シェレンベルガー)
第2章 ビンゲンのヒルデガルト(マルゴット・シュミット)
第3章 マイスター・エックハルト(ヨーゼフ・ズートブラック)
第4章 ヨハネス・タウラー(ミヒャエル・エガディング)
第5章 シエナのカテリーナ(ハンナ-バーバラ・ゲルル)
第6章 トマス・ア・ケンピス(ゲアハルト・ルーバハ)
訳者あとがき

Christian Möller hrsg.
Geschichte der Seelsorge in Einzelporträts, 3 Bde.
Göttingen 1994-96, 358+430+398 S.

* * * * * * * * * *

訳者の加藤は、1929年生まれ。福音主義説教学の大家である。この三巻本の論集を個人で翻訳というのが恐ろしい。ドイツ語原版1巻あたり4分冊としている。牧会というのはたぶん「pastoral care」つまりカトリックの司牧。

日本語版で12冊になるこの膨大な論集にあって、中世に割かれるのはたった一冊のみ。「教会=中世」というのは、カトリックの発想である。さらに、6人の執筆者のうち、プロテスタント系はゲルルとルーバハの二人だけ。プロテスタントのなかにあって、中世は依然として別世界である。なお、これに先立つ三冊の古代篇はすべてプロテスタント神学者が筆をとっている。プロテスタントにとって中世は別世界でも、古代はそうではないらしい。知ってはいたが、よく考えると大変興味深い。プロテスタントの歴史感覚はどうなっているのだろう。

あとがきの加藤の言葉を引こう。「特に、この中世篇は、中世という時代も、当時の教会も、日本のキリスト者、特にプロテスタントの者たちには、親しい名前が登場しないという印象があります。もっとも、一般の読書界においては、阿部謹也さんなどの労作を通じて中世が親しい存在になってきました。それに比べると、プロテスタントの者たちは、中世とは何であったか、私どもの信仰と生き方にかかわることとして問うことをしてこなかったと思います」(264頁)。このあとがきは21世紀になって書かれたものである。牧師さんがこのようにおっしゃるのだから、一般のキリスト者にとって中世つまり教皇の差配する一千年はあってなきがごとしなのかもしれない。他方カトリックにとって最大の異端はプロテスタント諸派であったはずであるが、この異端宣告はいつまで有効であったのだろうか。近代の宗教史にとって大変大事なことであるように思うが、歴史の世界で話題になったことはあるのかなあ。

『本のひろば』593号(2007)の特集「言葉が伝える豊かな心 本を読もう」で、福音館書店の創設にかかわり、社長と相談役を務めた松居直と対談をしている。銀座の教文館でもらったのだが、戦後史としてかなり読みごたえがあった。福音館って、その名からしてたしかにプロテスタント系ですね。


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