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千年王国の追求 [Medieval Spirituality]

千年王国の追求.jpg
ノーマン・コーン(江河徹訳)
千年王国の追求
紀伊國屋書店 1978年 456頁

はじめに
序章 本書の範囲
第1章 黙示録預言の伝統
第2章 宗教的異義申し立ての伝統
第3章 生活の方向を見失った貧民たちのメシア主義
第4章 反キリスト軍勢に立ち向かう聖徒
第5章 十字軍の余波のなかで
第6章 メシアたる皇帝フレデリック
第7章 自己犠牲的贖罪者のエリート
第8章 道徳に縛られない選民たち
第9章 平等主義的自然状態
第10章 平等主義的千年王国・1
第11章 平等主義的千年王国・2
第12章 平等主義的千年王国・3
結論
付録 クロムウェル時代のイギリスにおける自由心霊派、ランターズとその文書


訳者あとがき
参考文献
索引

Norman Cohn
The Pursuit of the Millennium: Revolutionary Millenarians and Mystical Anarchists of the Middle Ages, 3 ed.
Paladin 1970

* * * * * * * * * *

大変内容の濃い本。20世紀から21世紀の変わり目に、ヨハンネス・フリートとか、リチャード・ランデスとか、シルヴァン・グゲナムとか、クロード・カロッツィといった研究者が、類似のテーマで論文や研究書をものしたが、コーンの本は注世全体の千年王国論の概観を与えるという点で今でも貴重である。日本でこの研究をする人はあまりいないけれども、中世人のメンタリティをとらえ続けたテーマであるので、中世史の人間は知っておかないとまずい。ただし本書は「宗教運動」という観点からの通時的記述であり、運動の行動原理としての思想を追及しているわけではない。出版された年代も年代だし、コーンは一種の社会正義に熱い研究者であるようなので、そのあたりは割り引かねばならないかもしれない。どうも教会は悪者である。

なお本書は以下の二冊と合わせて三部作である。いずれも熟読にたる内容をもつ。
内田樹訳『ユダヤ人世界征服陰謀の神話』(KKダイナミックセラーズ 1986年)(出版社がアレなのでゴミのような値段でアマゾンに転がっているが、立派な研究書。訳者注目!)
山本通訳『魔女狩りの社会史 ヨーロッパの内なる悪魔』(岩波書店 1982年)

最近逝去したコーンの訳者は、いずれも必ずしも中世史家ではなく、コーンに興味を持ったいきさつも重ならないようだが、訳文のクオリティは低くない。偶然だろうが、読者にとっては幸運である。本書も長らく絶版であったが、最近新装復刊した。それも版型がほんらいの1・5倍くらいになって読みやすくなっていた。表紙の版画は、ハルトマン・シェーデルの『ニュルンベルク年代記』の挿絵(1493年)。
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