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『芸術新潮』12月号「ノルウェーの森へ」 [Arts & Industry]

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文:金沢百枝・小澤実・編集部/撮影:筒口直弘
特集「ノルウェーの森へ 中世の美とオーロラの旅」
『芸術新潮』2008年12月号 16-108頁

夏の旅 中世へ(文:金沢百枝)
1.オスロ ヴァイキングからはじまる
2.ソグネフィヨルド ふしぎな木の教会
3.ヴァルドレス地方 聖堂をまもるもの
4.ベルゲン 干し鱈の古都
5.オスロ エルラさんの話と廃墟の島

冬の旅 北極へ(文:編集部)

ノルウェー人物史(文:小澤実)
1.ヴァイキング最強の王 ハーラル苛烈王
2.海上王国の栄華 ホーコン4世
3.木簡の愛 ベルゲンの商人たち
4.ある移民の生涯 ローレンス・M・ラーソン

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和辻哲郎から村上春樹へ。写真家筒口直弘と美術史家金沢百枝による、『芸術新潮』北ヨーロッパ中世もの第二弾。

美術専門誌だけあって、写真の美しさがまず目を引く。今回の主役はロマネスク期ノルウェーの木造教会であるが、その木造教会を生んだ中世ノルウェーの自然遺産と文化遺産が、次から次へと紹介される。木造教会とはこんなやつ。フィヨルドや山岳の雄渾で、そして少し寂しげな景観の中に佇むからこそ、木造教会はよいのかもしれない。あんなのがパリやロンドンの真ん中にあっても興ざめでしょう。

金沢による文はただの紀行文ではない。本人がロマネスク美術の専門家ということもあり、語り口は柔らかいが、話は専門的。教会設置の社会経済的条件から教会内の図像学的解釈まで、既存の研究とそれに対する疑問が行き来する。さいごに木造教会研究の世界的権威エルラ・ホーラー教授にインタビューを試みている。微笑すら湛えないところはさすがノルウェー人。ただプロテスタント国の中世研究は、どうも禁欲的なんだよね。

ノルウェー人物史はおまけ。あろうがなかろうが特集内容に影響を与えない。ただ日本では、中世ノルウェーについてきちんと紹介した文章はないので、そういった点では無意味ではない。

平出隆によるハンマースホイ展の紹介もある。今月号は奇しくも北欧特集となった。北欧の中世美術がこれだけクローズアップされることは、今後まずないと思われる。雑誌なので今月を逃せば店頭から消えます。欲しい方は大型書店で手にとりましょう。

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