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北欧の海賊と英国文明 [Historians & History]

カンタベリ物語.png
金子健二
北欧の海賊と英国文明
研究社出版 1927年 348頁緒論
本論
第1篇 英吉利民族の人種的考察
第2篇 アングロ・サクソン族移住時代
第3篇 海賊王朝期
第4篇 北欧海賊文学の影響
第5篇 ゴッス族と南北の海賊

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日本ではじめてヴァイキングを論じた著作。探していたものがようやく見つかった。著者は英語・英文学者。

もちろんもはや学問的価値はない。ただ、史学史的価値のみがある。目次を見て、「なんで最終章でゴート族にさかのぼるの」といぶかしむ向きもあるだろうが、それは「南北の海賊が如何なる関係に於て相結び相離れたか」(6頁)という問題が、本書の根底にあるからである。北海の海賊と地中海の海賊を繋ぐ線は何か、ということである。そもそも海賊とはなんぞやという問題をおくとしても、なんと壮大な。結構な数のなかなか美しい図版が含まれている。出典は書いてないが、どこから取っているんだろうか。著名なケンドリックのヴァイキング概説は1930年だったので、ニルス・オーベリとかだろうか。

本書では「viking」を「ヴァイキング」としている。私は「バイキング」だろうが「ヴァイキング」だろうがどうでもいいのだが、こういった表現は業界の慣習がある。「スカンジナビア」、「スカンディナビア」、「スカンディナヴィア」。普通の日本語センスをもっていれば「スカンジナビア」が一番まっとうな表記と感じるのではないか思うが、業界では「スカンディナヴィア」とすることが多い。撥音や促音は文字数が増える上に見苦しい。これはもちろん「b」と「v」、「g」や「j」と「d」を区別させようとしての苦肉の策なので、あまり責めるのもなんだが、いや、自分で使っておきながら、非常に居心地が悪い。

金子健二(1880-1962)についてはここを参照。『カンタベリ物語』の初訳者らしい。写真は1972年の角川文庫版。この時代に当初から古代・中世英語に関心を持っていたという点に興味が引かれる、アメリカに留学したようだが、誰についたのだろうか。

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