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文化史とは何か [Intellectual History]

文化史とは何か.jpg
ピーター・バーク(長谷川貴彦訳)
文化史とは何か
法政大学出版局 2008年 viii+220頁

謝辞

序章
第1章 偉大なる伝統
第2章 文化史の諸問題
第3章 歴史人類学の時代
第4章 新たなパラダイム?
第5章 表象から構築へ
第6章 文化論的転回を超えて?

訳者あとがき
読書案内
文化史セレクション 1860-2003年(年代順リスト)
注記
索引

Peter Burke
What is Cultural History?
Polity Press: Cambridge 2004

* * * * * * * * * *

ピーター・バークの本は出れば目を通す。網羅的であるがゆえに結構がっくりすることが多いのだが、これは面白かった。もともと歴史記述を専攻しようとしていたから、得意な分野なのかもしれない。以前、アナールの歴史も岩波から出ていた。

文化史の出発点はブルクハルトらしい。彼のイタリア・ルネサンス論は1860年。文化史を意識的に歴史学の遡上に載せたのはカール・ランプレヒトだと史学概論で習ったような気もするが、内容を考えればまあブルクハルトが正しいのだろう。バークの主著がイタリアルネサンス論であり、それが脱ブルクハルトを目指したものであったという事実は、たしかにバークのブルクハルトびいきを予想はさせるが、まあそれはおくとしよう。

何でこんな本を読んだかというと、文化史を叙述するのは難しいと感じているからである。教科書にせよ通史にせよ文化に触れないものはないけれど、政治や経済をかたったあとでとってつけたように論じられるものが多い。鎌倉文化といえば運慶と快慶ね、といったような。政治や経済に比べ、文化はおまけであるという意識。私は個人的にこれをどうにかしたいのだが、そもそも文化が何をさすのか、そして何を対象とすれば文化史になるのか、それがわかったとてではどうすれば叙述に文化を組み込めるようになるのかよくわからない。絵画も彫刻も音楽も文化だろうけど、それだけが文化じゃない。

しかしいまや文化史の時代らしい。政治史や経済史のかわりに文化史ではない。衣装、涙、収集、性、小道具など、かつてであれば「パンくずと化した歴史」と揶揄された対象が、歴史学の前面に立とうとしている。政治史も政治文化史、経済史も経済文化史として文化史という枠組みに包接される。歴史=文化史。文化史という妖怪が這いまわっとる。いや別に悪いことではないけれど。でもバークは、いずれ旗色が悪くなるだろうねとは言っている。栄枯盛衰。

あまりの翻訳の酷さにここでも何度かこき下ろしたが、最近法政大学出版局はよい本が増えた。編集体制が変わったのだろうか。

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