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偽書「東日流外三郡誌」事件 [Intellectual History]

偽書「東日流外三郡誌」事件.jpg
斉藤光政
偽書「東日流外三郡誌」事件
新人物往来社 2006年 330頁

プロローグ
第1章 訴えられた謎の古文書
第2章 筆跡鑑定
第3章 偽書説
第4章 告発と告白
第5章 論争
第6章 御神体
第7章 聖地
第8章 増殖
第9章 奉納額
第10章 役小角と謎の竹筒
第11章 判決
第12章 背景
第13章 偽化石
第14章 寛政原本
エピローグ

あとがき
主な参考文献

* * * * * * * * * *

大変面白い本。著者は地方新聞の記者だが、執念とも言える足どりで、対象となる偽文書を生み出した環境を徹底的に追求する。テレビでくだらねえ三文芝居をみるくらいなら、本書を読んだほうがはるかに興奮する。

「東日流外三郡誌」を正確に読むことができる人は少ないと思うが、超古代史に関心のある向きの中では竹内文書と並びとても著名な偽書である。内容はこちら。この手のものは通常新興宗教と深いかかわりがある

近代の偽書はまともな研究対象にしてもらえないようだが、精神史としてアプローチするならば、これほど面白いものもない。竹内文書なんて、その周りにうごめく人物らがすごい。関心のある人はググってみなされ。日本史家狩野亨吉は『思想』に掲載した「天津教古文書の批判」で、冷静に偽書と判断している。狩野は一読して「バカじゃね」と思っただろうが、そこで初学者に噛んで含めるように(初学者は文書制度の用語などわからないだろうが…)真面目に答えるところがすばらしい。新興宗教にかかわることなので世間への影響をおもんぱかったのだろうか。プロによる啓蒙である。もったいないお化けが出るわ。

このような偽史の作成とそれを社会的に意味のあるものにしようとする偽史運動は、別に日本だけの専売特許ではない。ノーマン・コーンが徹底的に批判した『シオンの議定書』もそうである。大日本帝国だってナチだってトンデモ歴史観はもっていた。そういった意味でも、偽史は本格的な研究に値すると思うのだが…。

三内丸山といいゴッドハンドといいイエスの墓といいミイラ信仰といいイタコといい日本のピラミッドといい神体文字といい、みちのくはどうも日本とはちがうぞといいたくなる何かがあるようである。「東北学」という、やや色のついた(まじめな)地域研究もあるようだが、なんなんだろうね。いまだにエミシなにそれこわいっていう感覚があるのかね。おなじ鄙でも四国や九州じゃ絶対ありえん風景なのだが。東北は中世史家を輩出するといっていた人もいたな。たしかにこんなひととかこんなひととかこんなひととかは東北出身者。理由はわからんな。



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