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Lust for liberty [Medieval History]

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Samuel K. Cohn, Jr.
Lust for liberty. The politics of social revolt in medieval Europe, 1200-1425, Italy, France and Flanders.
Cambridge, MA: Harvard UP 2006, 376 p.

Acknowledgements
1. Introduction
2. Peasant revolts
3. Economic revolts
4. Varieties of revolts
5. Leaders
6. Women, ideology, and repression
7. Communcation and alliances
8. Flags and words
9. The Black Death and change over time
10. A new appetite for liberty

Notes
Sources
Index

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どうも中世後期が気になって仕方がない。隣の芝生は…というやつでしょう。初期中世であれば、記述の根拠となる史料はなにかという点まで気になるのだが、中世後期に関してはまだ事実として何があったのかという点だけに自分の関心がとどまっているので、適当に本をぱらぱら開くだけで収まりがつく。もちろん北欧については史料云々も気になるのだが…。

著者はグラスゴー大学の教授。専門はイタリア・ルネサンスの社会史。もともとPopular protest in late medieval Europe: Italy, France and Flanders(Manchester Medieval Sources). Manchesterf UP 2005という史料翻訳を出版しており、その経験を基にして本書を執筆したらしい。 副題にあるように、「中世ヨーロッパ」といっても、イタリア、フランス、フランドルという都市の先進地に限定されている。本文には史料引用が多く、楽しい。史料をして語らしめるという言い方を好む人が多いが、本書のような本をそう呼ぶべきなのだろう。私はまったく知らない人だが、随分と多産な方のようである。

社会運動史とでもいうのだろうか。トムソンやホブズボームらの著作が出たおかげで、いっとき耳目を引いた分野である。中世史ではモラとヴォルフによる概観と、1381年の事件を扱ったロドニー・ヒルトンの著作(『1381年の農民反乱』未来社)が古典か。使い古された言葉を使えば、「下からの歴史」とでもいえばよいのだろうか。かつては抑圧された民衆が云々で話はすんでいたのかもしれないが、いまは支配者との微妙な相互依存関係という観点からの研究が主であるような気がする。少なくとも中世の農民研究はそうなってきているのではないか。興味深いのは第8章の「旗と掛け声」。かつては話のさわりにもってこられたにすぎない対象だが、いまや象徴物研究として脚光を浴びるテーマである。



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