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イタリア 建築の精神史 [Intellectual History]

イタリア 建築の精神史.jpg
文:池上俊一/写真:大村次郷
世界歴史の旅 イタリア 建築の精神史
山川出版社 2009年 175頁

第1章 円かなる黙考 初期キリスト教建築
第2章 海辺の白い貴婦人 プーリア式ロマネスク
第3章 壁面のリズム進行 ピサ式ロマネスク
第4章 花咲くファサード イタリア・ゴシックの真骨頂
第5章 調和と比例 アルベルティのルネサンス
第6章 ヴィッラの快楽 マニエリスト、パッラディオ
第7章 黄金のスペイン残映 バロック都市レッチェ
第8章 脈動と幻惑 王都トリノのバロック
おわりに 様式から意匠へ

イタリア史年表
建築用語集
あとがき
参考文献
写真出典一覧
索引

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次から次へとよくでるなー。イタリア史家としての著者の作品は、シエナと食とアルベルティに引き続き4冊目である。

「円と球」をキーワードに、イタリア建築を初期キリスト教時代からバロックまで通覧しようとの試み。著者が訪れたことのある都市や農村の建築を対象としているので、すべてに言及しようとする総花的叙述でもなければ外すべきでないポイントを抑えた選択的叙述でもない。なんか書けそうな位までたまってきたからそろそろいってみよう、という感じ。著者は建築史家でもなければ思想史家でもないので、それでいいのである。

イタリア建築といえばルネサンスかバロックかというのがわたしのような素人の理解である。日本にイタリア建築史家ははいて棄てるほどいるようだが、みなルネサンスかバロック、せいぜい初期キリスト教建築で、ロマネスクやゴシックというのはあまり聞かない。わたしは飾り物が多くごてごてしたのが好きではないので、派手かましいイタリア建築には大して興味もないのだが、マニエリスムの章で紹介されるパッラディオが手がけた邸宅は、少なくとも外観は品があっていいなと思った。このまえNHKでやっていたヴォーリズと何か通じるものを感じた。ヴォーリズは住みやすさや機能性を追及したという点で特筆される建築家だが、パッラディオはどうなのだろうか。

建物は実際に利用してみないとわからない。これはナントカ様式でこのあたりがポイントですといわれても、わたしには「はあそうですか」としか言いようがない。この前見てくれは立派で中身はいまいちというケーキをくわされたが、それと通じる問題である。本書で紹介される建築には、教会や修道院といった聖界施設もあれば、市庁舎のような世俗公共物、また個人のヴィッラのような生活空間もある。使いやすさや住みやすさという観点からは、どれがいいのかねえ。

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