Vikingarnas språk [Medieval Scandinavia]
Rune Palm
Vikingarnas språk 750-1100
Stockholm: Nordstedts 2004, 523 p.
Förord
- Þungur hnífur : Vikingen in historien
- Vikingarnas färder
- Skrift och texter
- Tal och berättande
- Vikingarnas poesi
- Vår gren av språkträdet
- Forskningen om vikingarnas språk
- Liten vikingagrammatik
Regentlängder
Historisk översikt
Litteratur
Inskriftsförteckning
Tabell: geografisk fördelning
Ordförteckning
Bildförteckning
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著者略歴を見るに、パルムは、1948年生まれ、ストックホルム大学北欧言語学科の講師である(しかし今チェックすると、「コンタクトできねーよ inte tillgänglig」となっている。ルーン学会にもいなかったし、引退したのかね)。ルーン石碑の研究者にとっては必読であるRunor och regilonalitet: studier av variation i de nordiska minnesinskrfterna. Uppsala 1992の著者として著名である。刻まれたルーンには地域によって差があるという、ルーンの社会史の草分け的存在であり、本書がなければ、ビルギット・ソーヤーの研究書(The Viking-Age rune-stone)も生まれなかったはずである。
北欧中世の言語史を知ろうと思って英語の事典(Mediaeval Scandinavia, A companion to Old Norse-Icelandic literature and culture, The Viking world, The Oxford Dictinonary of the Middle Ages)を引くと、著者はすべてマイケル・バーンズ。バーンズはロンドン大学の名誉教授であり、たしかにヴァイキング時代の言語に関しては第一人者である。しかし全部が全部バーンズというのは解せない。バーンズが院政を敷いているのか若手が育っていないのかはしらないが、つまらない。バーンズはそもそも言語学の専門家なので、社会史との関係という観点が薄い。ということで本書を取り寄せてみた。
全体としてはまとまりのない本である。北欧言語の通時的や他言語との交渉を求めて紐解いたものは、がっかりするかもしれない。ただ、「文字とテクスト」「発話と語り」「ヴァイキングの詩」「言語系統樹のなかの我らが一枝」というように、テーマ別に議論が整理されており、どこから読んでも構わないし、それぞれが取り上げる話題は面白い。ヴァイキング言語の直接の手がかりはルーン石碑と韻文しかないので、この二つのテクストが分析の中心となる。ただし初学者向けにはできてない。ルーン石碑やスカルド詩のテクストに馴染んでない人は読みにくいだろう。
言語から見た北欧中世というのを一度まとめてみたいが、本書を拾い読みして、言語学の知識の乏しいわたしにはちょっと無理かなと思った。一般的に現地語の習得レベルは、文学>言語学>歴史学といわれる。歴史学の人間は、基本的に専門用語と論理フォーマットの決まった研究文献しか読まないので、生きた言語が身につかないのでしょう。
さて、以上のような文献を講読することから容易に想像が出来るように、わたしの専門はあくまで北欧中世史である。決してイギリス史でもドイツ史でもイタリア史でもロシア史でも地中海史でもない。専門というのはその分野での研究動向と利用可能な資料を知悉し、それらを咀嚼してオリジナルな論文を書くことができるということと同義である。しかし北欧という枠はどうも需要がないので、専門は北ヨーロッパ史ですとかヨーロッパ中世史ですとか言わざるを得ないのである。