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ルネサンス文化史 [Medieval History]

ルネサンス文化史.jpg
E・ガレン(澤井繁男訳)
ルネサンス文化史 ある史的肖像
平凡社 2000年 301頁

序文
1.ルネサンスと文化
2.新しい時代という意識
3.古典の発見
4.ギリシア人とルネサンスの起源
5.人文主義とルネサンス 連続か対立か
6.図書館と印刷術の発明
7.新しい教育
8.政治的省察に関する主題と問題 現実の都市と理想の都市
9.批判と宗教的刷新の動機
10.新しい哲学 人間と自然の賞揚
11.新しい科学 人間と世界の認識
12.人文主義文化と国民文学
13.美術 建築、彫刻、絵画

訳者あとがき
参考文献
主要人名索引

Eugenio Garin
La cultura del Rinascimento. Profilo storico
Bari: Laterza 1967

* * * * * * * * * *

大学で中世史をやりたいと思う人は、少なくともビレンヌ『ヨーロッパの誕生』、ブロック『封建社会』、ホイジンガ『中世の秋』、ブルクハルト『イタリア・ルネサンスの文化と社会』は読んでおかねばならない。社会学部の人間がウェーバーとデュルケムを読むのと一緒で、中世のどの時代を選ぶにせよ、必読である。多分難しいと思うけれど、学部生ごときが100パーセント理解できる本は、知的訓練には意味がない。その年齢に相応しいレベルより少し先のものをやらせるべきと言ったのはロシアの教育学者ヴィゴツキーだったと思うが(ちがったかな)、ある程度の負荷をかけて初めて教育効果は現れると私は考えている。これは大学生ならずとも小学生でも高校生でも一緒で、私は仕事ではそうしてきた。

ところでこの四人の中で、ブルクハルトだけ自分の生活圏とは表面的には関係のない地域を研究対象とした。彼はバーゼルの人間だが、著作の対象はイタリアである。つまり彼にとっては外国史である。もちろん日本人がイタリア史をやるのとは全く意味が別で、ルネサンスは近代ヨーロッパすべての起源であると信じていたわけであるから、なかばルーツ探しめいたところはある。使う言葉だってギリシア語、ラテン語、イタリア語だから、当時の教養人であれば小さい頃から叩き込まれていた言語である。旧制中学で漢文を、旧制高校でドイツ語を修練した日本人が朝鮮史や中国史をやるようなものだろうか。

ブルクハルトがあまりにも著名であったおかげで、少なくとも日本では、本場イタリアでのルネサンス研究の紹介がさっぱりされなかった。本書が、イタリアを代表するルネサンス研究者エウジェニオ・ガレン(Garinは素直に読めばガリンだが、日本では皆ガレンといっている。なぜでしょう)の一般向け代表作である。小著ではあるが、非常に内容が濃い。物語性という点ではブルクハルトのほうに軍配が上がるけれども、生き生きとした思想をよみがえらせているのはガレンである。ルネサンスに興味がある人は、ブルクハルトよりもこちらを読んだほうがよいと思う。

ルネサンスの研究は汗牛充棟であって、テーマを絞らなければとても追うことはできない。その点、ピーター・バーク(亀長洋子訳)『ルネサンス』(岩波書店 2003年)は問題点の指摘と文献紹介があって便利な本である。ただし、これだけを読んでも意味がない。バークは何でも知っているが、大体どの本も平面的でただ情報が羅列されているだけである。俯瞰が得意な英国人らしいが、そうだからこそガレンとブルクハルトを読んだ後ではじめて価値が出る。

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