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世界歴史大系 ロシア史1 [Medieval History]

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田中陽児編
世界歴史大系 ロシア史1 9世紀-17世紀
山川出版社 1995年 xv+449+60頁

第1章 ロシア国家の起源(清水睦夫)
第2章 キエフ国家の形成(田中陽児)
第3章 キエフ国家の解体(田中陽児)
第4章 分領制ロシアの時代 諸公国の分立とモンゴルの侵入(栗生沢猛夫)
第5章 モスクワ大公国の成立と発展(栗生沢猛夫)
第6章 イヴァン4世雷帝とその時代(栗生沢猛夫)
第7章 「動乱」とロマノフ朝の成立(鳥山成人)
第8章 初期ロマノフ朝の政治・経済・社会(鳥山成人)
第9章 17世紀モスクワ国家と周辺世界(鳥山成人)
第10章 中世ロシア文化の諸相(中村喜和)

付録

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2年前ならページを開くのすらイヤだったが、必要に迫られて読むと面白い。まる一日、こればかり読んでいた。ロシア史の層がいかに厚いかよくわかった。大体当該分野の研究者の質は、語学辞典の質に比例すると思うが、ロシア語辞典が充実しているのも、むべなるかなである。隣国だから、当たり前といえば当たり前なのだけれど。

スラブ民族の起源がどこにあるのかいまだによくわからないが、ロシア中世史は、キエフ・ルーシ→分公国→タタールのくびき→モスクワ国家という流れであることがわかった。もちろん、モスクワを中心としたこの見方には異論もあり、たとえばノヴゴロド国家をどういう風にこの流れに組み込むかというのも、歴史叙述上の問題である。ましてや、外部勢力であるノルマン問題やタタール問題は、今後とも簡単には解決できない重石となって、ロシア史記述に付き纏うだろう。われわれは外国人なので、関係ないけど。

ロシア史は正教世界なので、ビザンツ文化圏として理解するべきなのかもしれないが、カトリック世界と接し、イスラム世界とも常に交渉している。本書ではイスラム世界についてほとんど触れていなかったが、これ、本当は重要なんじゃないの。

「世界歴史大系」は政治史である。もちろんそれ以外の経済史や社会史も書いているけれども、おまけである。文化史はあってなきが如し。例外は樺山先生の『フランス史1』。ただ、昔は目新しくていいと思ったが、事典としてつかうには政治史に特化してくれていたほうが今はありがたい。つまらない政治史を母国語以外で読むのは苦痛だから。

「世界歴史大系」のヨーロッパ編は、イギリス、フランス、ドイツ、ロシアが第一期としてあり、近ごろスペインがでた。イタリアとポーランドも予定されている。大国はこれで終わりで、あとは小国となる。だから「新版世界各国史」で間に合うといえば間に合うけれど、かりに北欧史が企画されたとして、残念ながら現段階では、書ける人が日本にはいない。デンマーク史やスウェーデン史の専門家は、僅かながらいなくはないけど、北欧史というパースペクティブでものを考える人は限りなくゼロに近い。それならいっそのこと、北欧史ではなく、一国史単位でやってもいいと思う。一国史ですら、(フィンランドを除いて)ろくな参考書がないんだから。

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