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Trickster Travels [Medieval History]

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Natalie Zemon Davis
Trickster Travels. A Sixteenth-Century Muslim between Worlds.
New York: Hill and Wang 2006, 435 p.

Notes on transliteration and dates

Introduction: crossings
1. Living in the land of Islam
2. Living on the land of war
3. Writing in Italy
4. Between Africa and Europe
5. Conceiving Africa
6. Between Islam and Christianity
7. Curiosity and connections
8. Translation, transmission, and distance
9. The return
Epilogue: affinities

Notes
Glossary Arabic words
Bibliography
Acknowledgements
Index

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わたしは中世のアフリカが気になって気になって仕方がない。だから今年の秋の史学会にあわせて刊行予定となっている石川博樹『ソロモン朝エチオピア王国の興亡 オロモ進出後の王国史の再検討』(山川歴史モノグラフ) (山川出版社 2009年)が楽しみである。ヨーロッパ史の区分で言えば近世だけど、15世紀のことも少しは触れてくれているんじゃないかと思う。

それはともかく、歴史学でのアフリカ大陸は、まずサハラ以北と以南にわかれ、さらにサハラ以南が東アフリカと西アフリカにわかれる、らしい。おおよその流れはこちらを読めばわかるけれど、世界システム論的な理解に立てば、アフリカとて中世ヨーロッパ世界とは無関係ではない。アフリカの黄金が地中海世界には流れ込んできているからである。

とはいえ、ヨーロッパ人がアフリカに対する詳細な知識を持ち始めたのは、まずもって本書の主人公レオ・アフリカヌスが1526年3月10日に書き終えた、936ページにもなる『アフリカの記述』による。イタリア語によるイタリアでの刊行というのがミソ。16世紀の出版事情について私の知るところは少ないが、オラウス・マグヌスの『北方の民に関する歴史』もやはり1550年にローマでまず刊行されている。単純にイタリアが出版文化先進地ということなのかもしれないけど、そうじゃないなにかもあるんだろう。

ナタリ・ゼモン・デヴィス(1928-)はいわずと知れた20世紀を代表する近世史家。北大で西洋史学会があったとき、基調報告をした。日本ではピーター・バークと同等の知名度を持つがゆえに、翻訳の数も多い。とりあえず調べてみた。

成瀬駒男訳『マルタン・ゲールの帰還 16世紀フランスの偽亭主事件』(平凡社 1985年、1993年に平凡社ライブラリー)
岩崎宗治訳「シャリヴァリ、名誉、共同体 17世紀のリヨンとジュネーヴ」『思想』740号(1986年)186-204頁
成瀬駒男他訳『愚者の王国異端の都市 近代初期フランスの民衆文化』(平凡社 1987年)
成瀬駒男・宮下志朗訳『古文書の中のフィクション 16世紀フランスの恩赦嘆願の物語』(平凡社 1990年)
近藤和彦訳「16世紀フランスにおける贈与と賄賂」『思想』880号(1997年)63-77頁
近藤和彦訳「贋者のリメイク マルタン・ゲールからサマーズビへ、そしてその先」『思想』880号(1997年)44-62頁
広沢靖彦訳「文化の混交を問い直す」『現代思想』26巻5号(1998年)20-37頁
長谷川まゆ帆,・北原恵・坂本宏訳『境界を生きた女たち ユダヤ商人グリックル、修道女受肉のマリ、博物画家メーリアン』(平凡社 2001年)
宮下志朗訳『贈与の文化史 16世紀フランスにおける』(みすず書房 2007年)
中條献訳『歴史叙述としての映画 描かれた奴隷たち』(岩波書店 2007年)

ほとんど読んだけど(論文の訳は他にもあったと思うけど)、どれも話の作り方がうまい。作り方というのは、証拠の見せ方のこと。本についてはおそらく編集者の手も入っているのだと思う。アメリカの出版社は売れるものを作るのに容赦ないから。本書もどこか版権を取って翻訳を進めてくれていると信じたい。


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