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La ville au Moyen Âge [Medieval History]

La ville au moyen age.jpg
Jacques Heers
La ville au Moyen Âge en Occident. Paysages, pouvoires et conflits.
Paris: Fayard 1990, 550 p.

Avant-propos
Ch.1: Après Rome: continuité ou effacement?
Ch.2: Conquêtes et reconquêtes, dèpouilles et reconstructions
Ch.3: Les villes neuves
Ch.4: Expansion urbaine et urbanisation
Ch.5: Conflits et particularismes
Ch.6: Le bien commun: sollicitude ou prétexte?
Ch.7: Un nouvel urbanisme communal? les leçons d'un échec
Ch.8: Les villes princières
Conclusion

Notes
Bibliographie
Table des plans
Index

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実家住まいでない者の悩みに引っ越しがある。引っ越しとはいかぬまでも、狭い家屋の収容スペースには限界がある。それを越えると、余剰物を選別して別の場所に移動かつ保管しなければならない。とりあえず40箱ほど実家に送り返すことにしたが、単身パックが32500円に有料道路費用が7200円。後者は実家が船でしかたどりつくことのできない極度の僻地ゆえである。

その荷造りをしているときに出てきたのがこれ。私が初めて触れたフランス語の専門書で、とても懐かしい本である。今は辞書なしでも意味は取れるが、15年前は一頁予習するのに4時間とかかかっていた。恩師のゼミで5、6年ほど読んでいたんじゃないだろうか。私は3年出ておいとました。

都市型の人間である恩師は、随分都市に興味を持っていたようである。1990年代後半当時、日本で中世都市市の本といえば、なおドイツが強かったのではないだろうか。近代はそんなことはなかったと思うが、恩師に言われて作成した文献目録には、ピレンヌは措くとしても、プラーニッツだとかエネンだとかが並んでいる。それではだめだということで、フランス語による本書をテクストとして選択したのだろう。たしかゼミの最初にそんなことを言っていたような気もする。

本書が他の中世都市史の概説と異なるのは、各所にちりばめられた都市プラン図である。従来の都市史が、主として都市法であるとか都市参事会といったような法的な側面から垂直的に理解しようとしたのに対し、エルスは都市計画という観点から、水平的に切り込んでいる。抽象的理解力を欠く私などには、この細胞のような都市プラン図を参照しながら本文を読むのがとても面白かった。ゼミでは毎回2頁から3頁とたいして進まなかったが、ヨーロッパ地図に出てきた都市名をプロットしながら、結局通読してしまった。ところどころに線がひいてある。

エルスは中世後期イタリアの専門家であるため、地中海の事例が圧倒的に多い。日本語で読めるものはドイツの事例が中心であったため、これも新鮮であった。ただ本書は基本的に都市の復活というもう一つのピレンヌテーゼを前提としているため、初期中世の研究者には物足りないだろう。初期中世都市空間の機能は、盛期中世のそれとは異なる。これだけ考古学の成果が増えた現在では補足が必要だろう。

さきほど日本語でも河原温の便利な本が出た。河原の本は都市計画と景観というエルスの中心的論点から先に進み、都市イメージまで踏み込んでいる。都市史は基本的に商業史の一分野であったが、その後都市法、都市農村関係、都市計画・景観、都市イメージと来て、次のテーマはなんになるのであろうか。祝祭と儀礼かね。

新版は表紙が緑であるが、旧版は青である。緑より青のが美しい。

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