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ドイツ宗教改革 [Medieval History]

ドイツ宗教改革.jpg
R・W・スクリブナー/C・スコット・ディクスン(森田安一訳)
ドイツ宗教改革(ヨーロッパ史入門)
岩波書店 2009年 xii+118+40頁

序文
第2版序文
凡例

第1章 宗教改革神話
第2章 宗教と改革
第3章 福音主義運動としての宗教改革
第4章 宗教改革の社会的位置づけ
第5章 政治と宗教改革
第6章 さまざまな宗教改革
第7章 改革の衝撃
第8章 増補

訳者解説
関連年表
参考文献・参考文献補遺・日本語文献案内
索引

R. W. Scribner & C. Scott Dixon
The German Reformation, 2 ed.(Studies in European History)
Macmillan 2003

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これだけ読んでどうにかなるものではないが、トレルチでもベイントンでもよい、古典的著作を読んで臨めば意義のよくわかる書物。要するに、ルターやツヴィングリら、宗教改革の英雄の神学的見解に重きを置いていた古典的著作を相対化する作業である。

本文といっても、研究動向紹介である。関心のある人には面白いし、ない人には苦痛である。著者のスクリブナーは神学者ではなく民衆運動という観点から宗教改革を理解しようとする研究者のリーダー的存在であったらしい。メディアに注目し、従来いわれていたような書物ではなく宗教パンフレットの重要性を説いた。なんでもかんでも民衆の側からというのはどうなんだという気もするが、本書はすんなりと読めた。ドイツ宗教改革だから仕方ないのかもしれないが、話のほとんどがドイツで終わっている。近ごろは一国史的宗教改革理解は減退したものだと思っていたが、そうでもないらしい。他国への波及、もしくは他国からの影響という論点は持ち込まなくてもいいのだろうか。

面白かった箇所。63ページで改革家の性格を整理しているが、

(1)ルター…信者を待ちうけ、為政当局を待ち続ける。
(2)カールシュタット…信者も為政当局も待たない。
(3)ツヴィングリ…改革を推し進めるために為政当局に政治的圧力をかける。
(4)ミュンツァー…必要ならば為政当局に対して暴力を行使して改革する。

ミュンツァーは信長、ルターは家康ですな。

私自身が不勉強なせいもあって、なぜ北欧がルター派を国教として導入したのか未だによくわからない。もちろん信仰の決定は国事であり、したがって王権による政治意志が最終的判断を下す。しかしながら、北欧各国の王権は、ルター派を導入することによってどのようなメリットがあったのか。プロテスタント・ネットワークという流行の議論からすれば、北欧はプロテスタント化したおかげで、北部ドイツ、オランダ、スコットランドからの商業資本を容易に導入できた。他方でバルト海という観点にたった場合、南のポーランドはカトリック、東のロシアはロシア正教である。16世紀のバルト海は、ルター派、カトリック、ギリシア正教が囲繞する空間となっていた。歴史学者であればこれが何を意味するのか説明せねばならないが…よくわからんな。

訳者の森田安一は歴史家として長年日本の宗教改革研究を牽引した。『ルターの首引き猫 木版画で読む宗教改革』(山川出版社 1993年)という面白い本を書いているが、そのベースはこのスクリブナーの議論であったような気がする。最近退職記念論文集のようなものが出た。手にとって、日本にもいろいろな宗派をやっている人がいるんだなと思った。
森田安一編『ヨーロッパ宗教改革の連携と断絶』(教文館 2009年)


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