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イタリア都市社会史入門 [Medieval History]

イタリア都市社会史入門.jpg
斉藤寛海・山辺規子・藤内哲也編
イタリア都市社会史入門 12世紀から16世紀まで
昭和堂 2008年 296+xxxiii頁

序章 歴史のなかのイタリア都市社会(藤内哲也)

第1部 都市のかたちとしくみ
第1章 都市の成立環境(城戸照子)
第2章 都市の景観と環境(徳橋曜)
第3章 支配のかたち(高田京比子)
第4章 商業の発展と商業技術(斉藤寛海)
第5章 海のかなたのイタリア イタリア都市の海外領土(亀長洋子・高田良太)

第2部 都市のくらしと文化
第6章 大学の誕生と都市(山辺規子)
第7章 夫婦と親子(高橋友子)
第8章 生活文化(山辺規子・伊藤亜紀)
第9章 教会と聖人崇敬(三森のぞみ)
第10章 説教と民衆(大黒俊二・木村容子)
第11章 人びとのきずなと祭り(藤内哲也)
第12章 都市の文化と芸術(松本典昭・和栗珠里)
第13章 イタリアの宮廷社会(北田葉子)
終章 イタリアの歴史、日本におけるその研究(斉藤寛海)

参考文献
あとがき
地図

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イタリア史研究入門ではない。イタリア「都市」史研究入門である。思ったことが二つ。日本のイタリア史は都市史というミクロなレベルで入門書を作ることができるほどのレベルに達しているのかというのがひとつ。イタリア史というのはひょっとするとイタリア都市史と同義語ではないかというのがふたつである。通読するとどちらともおおよそ間違いではないということがわかった。こちらが総体としてのイタリア、こちらが地域の集合としてのイタリアなので、本書を合わせれば、「国家」(これは1861年以降のまとまりだが)・地域・都市という三つのレベルのイタリアが通覧できる。

内容のレベルは高い。売れると踏んで出版社が頑張ったのか、ボリュームの割に値段も安い(2940円)。日本のイタリア(都市)史のレベルが高いのは、いずれも故人となったフィレンツェ大学教授星野秀利と一橋大学教授清水廣一郎がいたからである。私の感覚では、ある特定分野の学問というのは、できる人が一人あらわれると一挙にレベルがアップする。コペルニクス的革命論を唱えたトマス・クーンの学説そのままである。…そもそもイタリアというのは飯もうまいし、天気もいいし、風景も奇麗だし、何をやっても楽しい空間である。勉強自体も楽しいのだろう。面白い面白いと自分に言い聞かせなければやってられない北の国とは大違いである。

いつも思うが、イタリア史で教皇庁はどういう扱いなのか。もちろんカトリックの総本山なのでキリスト教史の枠で語られることが多いのだが。中世盛期以降は都市国家のひとつである。日本では信仰抜きにニュートラルに教皇庁研究に接近できる研究者がまだほとんどいない。中世研究全体にとってこれは憂うべきことである。加えれば、中世初期の研究者が少ないことも気になる。本書の執筆者の中で初期の専門家は、経済史の城戸のみ。もちろん盛期以降に比べて初期は史料が少ないことは門外漢の私でも知っているが、他の地域の初期中世の史料の状態を知る身としては、それでもイタリアは恵まれすぎるほど恵まれている。本書は12世紀から16世紀までを主として扱うが、ビザンツやノルマンの影響がモロに現れるのはそれ以前の時代である。こちらも誰かやらねーのかな。

執筆者に「ヨーコ」が三人もおる。

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