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砂糖のイスラーム生活史 [Medieval History]

砂糖のイスラーム生活史.jpg
佐藤次高
砂糖のイスラーム生活史
岩波書店 2009年 viii+241+51頁

プロローグ
第1章 砂糖生産のはじまりと拡大
第2章 赤砂糖から白砂糖へ 製糖の技術
第3章 ラクダと船に乗って 商品としての砂糖
第4章 砂糖商人の盛衰
第5章 薬としての砂糖
第6章 砂糖と権力 賜り品と祭の品
第7章 食生活の変容
エピローグ

あとがき
用語解説

史料と参考文献
索引

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一般書の体裁をとりながら、史料引用の山である。短いながら情報が詰まっているということである。過程に関心のある歴史家にはありがたいが、結論を求める一般読者は少々つらいかもしれない。

イスラム世界の砂糖の役割に関心を持ってから随分と長い間史料収集を続け、ようやく結実した本であるという。それもそのはずで、砂糖などという日用品を正面から取り上げた史料など固まって存在するわけではなく、医学書や年代記、商業記録や文学などの多様なテクストのあちこちに証言は散らばっているのである。

砂糖だの紙だのの研究は、なかなか進まない。今述べたように、史料のあちこちに証言が分散していることもあるが、作成方法の技術的な側面についてわからないことがたくさんあるからである。そこで登場するのが考古学である。考古学にも実際穴を掘って遺構をさがす通常の考古学と、当時の書物に書かれたやり方で本当にそこに書かれたことが可能かどうか試してみる実験考古学がある。最近は後者も盛んなようで、なかなか面白い。佐藤も農学部にまで出向いたりして、手探りですすめている。

驚いたのはかのゲニザ文書の研究があまり進んでいなかったこと。ゴイテインが5巻本の研究を出したのでそれが決定版となったと思っていたが、ぜんぜんそんなことはないらしい。アラビア語をヘブライ文字で書くということをやっているので、アラビストもヘブライストも敬遠しているのかもしれない。佐藤は若い人にチャレンジを促している。

IMEは普通に打つと「佐藤のイスラーム生活史」とでてくる。佐藤だから砂糖に興味を持ったということもあながちないことではない。外国人で自分の名前と同じ聖人の研究をする人はたくさんいるし、苗字と同じ職業の研究をする人もそれなりにいる。マックス・ウェーバーもWeber(織工)の研究をしていたような。

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