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イタリア12小都市物語 [Medieval History]

イタリア12小都市物語.jpg
小川煕
イタリア12小都市物語
里文出版 2007年 306頁

参考地図
まえがき

ペルージャ(Perugia) エトルリアからルネサンスまで
ラヴェンナ(Ravenna) ビザンティン美術の宝庫
モーデナ(Modena) ロマネスク街道の要衝
ピーサ(Pisa) 中世海港都市の栄光
パードヴァ(Padova) 中世の知の形成
シエーナ(Siena) 中世理想都市の運命
ヴェローナ(Verona) 北方との邂逅
ウルビーノ(Urbino) 新しきアテネ
マントヴァ(Mantova) ある宮廷の盛衰
フェッラーラ(Ferrara) 小さなルネサンス
パルマ(Parma) フランス文化の投影
ベルガモ(Bergamo) ヴェネツィア・ルネサンスの波及

あとがき
参考文献
人名索引

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中身の詰まったエッセイとでも言えばよいだろうか。日本オリベッティ社の『SPAZIO』に連載された文章に補筆して一書にまとめたもの。著者の中ではこの12都市を選ぶのに迷いはなかったという。他の本では取り上げられない都市もあるので、それぞれ読み応えがあった。

イタリアの都市は個性豊かなので、調べると面白い。ほとんどどの都市でも、12世紀以前はエトルリア、ローマ、ゴート、ランゴバルド、ビザンツ、ノルマンの痕跡が、それ以降はロマネスク、ゴシック、ルネサンス、バロックといった異なる文化の貌が見え隠れしている。ヴェネチア、フィレンツェ、ローマ、ナポリといった有名都市だけではない。ヴィテルボやファエンツァ、レッジョといった日本ではマイナーな都市にも、しっかりと誇るべき歴史がある。都市が個性的である分、イタリア全体をとらえるのはかえって難しく、なかなか「イタリア」史が描けないゆえんである(だから新版『イタリア史』はよかった)。

これは都市の少ない北欧とは逆の現象である。日本に限らず多くのひとは、デンマークもスウェーデンもノルウェーもなく「北欧」というくくりを用いる。ことはそんなに単純じゃないと申し上げたいところだが、都市という単位で歴史を論じにくい北欧は、なかなかその地域的個性が外にいる人間には見えてこない。デンマークといえばコペンハーゲンだが、それではコペンハーゲン以外の代表的な都市を挙げよといわれても困ってしまう。もちろんオーフス、リーベ、オーデンセなどあるにはあるが、イタリア都市のような歴史の厚みがない。別にけなしているわけではなくて、それがヨーロッパ南北、というかローマの後継者であるかどうかの差である。ローマの遺産がなければ外民族が侵入することもなかったかもしれないことを考えれば、はじまりはローマである。…北欧史の人間がこういう考え方をしててはいかんな。

…イタリアと北欧の最大の差はメシ。これはいかんともしがたい。なんで北欧の人間はよそからメシの作り方を学ばんのか。

著者は『芸術新潮』編集部を経て、ローマに留学、その後中部大学に職を得た。なんだか不思議な経歴である。


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